表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界禁酒生活  作者: 田中 太郎
第一章
2/223

2. 異世界転生

 これは夢かな、自分が大声で泣いている気がする。ただ声が違うような。

 朝になって意識が起き始めているのだろう、会社に行くために起き上がろうとする。


(あれ、すごく眠い、寝そう、二度寝したら、会社遅刻する)


 でも、抗えない。


 次に意識がはっきりしたとき、口から何かを吐き出してしまった。


(あれ、二日酔いかな、昨日はいつも通り一本しか飲んでなかったのに)


 トイレに行かなきゃ布団が大変なことになると思い急いで起き上がろうとする。


(でもまただ、すごく眠い、寝そう、二度寝したら、会社遅刻する)


 また抗えなかった。

 そんなことを繰り返し、おそらく数か月、周りがだんだん見えるようになってきて状況を理解してきた。


(俺、赤ちゃんになっちゃったよ…)


 広い部屋の中で目線を動かしながら心の中で呟く。周りには、兄や姉と思われる人たちがいる。頬をつんつんされながら笑われている。微笑ましい光景だ。平和だ。


(とりあえず、会社にはいかなくていいんだよな)


 今の状況を整理しようと考え始める。前世にあまり未練がない事と、周りにいる可愛い天使たちのお陰で冷静に考えられている。にっこりと微笑むと、天使たちは大喜びしてくれる。天使たちが何を言っているのかまだ分からないが、そのあたりは追々でいいだろう。


(しばらくは休暇だと思って楽しむか)


 再び、部屋の中を見渡す。結構裕福な家なのか、部屋はかなり広い。前世の一人暮らししていた自分の家の二倍近くはあると思う。しかもこの部屋は俺一人で使わせて貰っている。



 あとこれは一番大事なことだが、この世界には魔力のようなものがある。目に集中すると天使たちの周りに白くもやもやしたものが見える。角度的によく見えないが、自分の周りにもある。まあ、こうして目に集中していると周りが焦り始めるから人がいる時にはあまりやらないようにしている。おそらく泣き始めようとしていると思われているんだろう。


 そんな感じで毎日楽しく過ごしているが、一つ問題がある。


(ああ、酒飲みたいな…)


 お腹が空いた時、泣いてみれば、母親と乳母みたいな人が母乳を与えてくれる。母乳だけではあの酒を飲んだ後特有の浮遊感というか酔った感じが味わえない。数か月間、禁酒生活をしているようなものだ。幸い禁断症状などはない。前世では、酒を飲まないと頭が痛くなるような気がして、出来るだけ飲むようにしていたが、この世界ではしばらくは必要がなさそうだ。


 別にどうしても酒が飲みたいわけではない。まずいし。ただ、酔った感覚を味わいたい。多分あの感覚の中毒になってしまっているのだと思う。そんなことを考えながら、眠気に従い眠りにつく。


(ああ、酒飲みたいな…)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ