19. 盗賊
魔法と剣術の鍛錬をこなす日々の中、気分転換に狩りに来ていた。
いつもの場所で狩り過ぎるのも生態系にとってよくないかと思い、森の外側に沿って移動する。
(この辺かな)
いい感じの場所で森に入る。いつも通り周りの気配を探りながら進んでいく。そんなに時間が掛からないで今日の獲物、ウサギを発見することが出来た。慎重に近づき、短剣を投げる。今日も一撃で仕留めることが出来た。そのまま普段厨房で見る料理人のように血抜きを始める。ついでに解体をし、きれいな布で包みリュックにしまう。
(さて…帰るか)
行きとは違い、最短距離で家に向かう。気配を探りながら進んでいくと何か集団の気配を感じる。確認しようと近づくとわずかに血の匂いがする。さらに近づくとその正体がわかった。
(…人か…)
荷車の様なものに檻がつけられていた。それが三つありその全てに人が入っていた。最近この近くで盗賊が出るようになったので警戒するようにと父に言われていたのを思い出した。
助けるかどうか迷っていると前方が騒がしくなった。どうやら盗賊たちが新たに攫ってきた人を連れてきたらしい。そのまま檻の中に入れようとしているので俺はこっそり誰が鍵を持っているのか確認する。
どうやら一番体格の良いリーダーらしき人が鍵を持っているらしい。
「…ふーー…はーーー…」
長く深呼吸をして覚悟を決める。リュックの中からフード付きの外套を取り出し被る。フードを深めにかぶり顔を隠す。敵は全部で十人。足の裏から魔力を放出し、少し浮かせる。
タイミングを見計らってホバー走行で草むらから飛び出す。
(まずは一人!)
近くにいた一人の鳩尾に全力の拳を叩き込む。周囲にいた二人にも同様にする。魔力を乗せた全力だったお陰か、うずくまって気絶していた。これで殺さなくても大丈夫そうだ。残りも同じように片付けようと行動する。
「なっ…!」
気づかれたが関係ない。最初にシミュレートしたように動く。初めての事で、更に守るべき人たちがいるので、敵が俺の襲撃にどんな対応をするか、どんな行動を取られたらどう動くかを念入りに計算してから行動している。
(あれ?)
しかし想定外の事態に陥る。相手が遅すぎるのだ。父の鍛錬に慣れすぎたせいか、相手が遅く感じる。一瞬戸惑ったが、好機ととらえて一気に攻め込む。淡々と作業を繰り返すかのように拳を叩き込む。
数分後、怪我無く全員を倒し終わる。一人も殺さずに終わらせることが出来たことに安堵する。
リーダーの腰から檻の鍵を取りそのまま檻の鍵を開ける。
二つ目の檻の鍵を開け終わったとき、周りが騒がしくなる。周囲を見渡すと、解放した人たちが気絶している盗賊達を殺していたのだ。一瞬なぜそんなことをしているのか理解が出来なかったが、盗賊にされてきたこと思うと一応は納得できた。が、どれほどの事をされた来たのかたらそんな風になるのか想像がつかず、気安く彼らを止めることが出来なかった。フードを深めに被り最後の檻に近づく。
最後の檻には女の子が一人だけ入っていた。同い年くらいだ。早々に鍵を開けてあげ、俺は速足でそこを立ち去る。
気持ちを整理するために、いつもより遠回りで歩みを進める。日が傾き始めるまで歩き続ける。
(酒飲んで忘れたい)




