142. ヒーローは遅れてやってくる
俺は寝坊した。長旅と連戦で思ったより疲れていたみたいだ。
(やばい!寝すぎた!)
俺は急いで装備を整えて部屋を出た。部屋を出た所に双子とティナが居た。そしてアリスは俺に駆け寄って来た。
「パパ…また戦いに行くの?」
「ああこの戦いを終わらせてくる」
「…パパ行っちゃだめ!パパが死んじゃう!」
俺の返事を聞いたステラが俺の行く先を止めてくる。小さい手を広げて先に行けなくする。俺はステラとアリスの頭へと手を乗せて撫でてあげる。
「大丈夫だ。俺達は勝つさ。必ず戻ってくる。死なない」
「パトリシアお姉ちゃんも同じこと言ってた…でも、でも」
二人は涙を浮かべて反論してくる。昨日、パトリシアが死んだんだ。この幼い子達がそれを引きずっていてもおかしくない。俺は二人を引き寄せて抱きしめる。
「俺は二人を守り切るまで絶対に死なない。必ずな」
「…また……私、達が弱いから…」
「それは違う。俺がお前達を愛しているからだ。父親にカッコつけさせてくれ」
俺はそれだけ言うと二人を置いて歩き出す。
「ティナ、記憶戻ってるんだろ。二人の傍に居てやってくれ」
「……」
俺は砦を出た。砦を出た所に部下達が待っていた。皆敬礼をしていた。
「お前らちゃんと仕事しろよ……行ってくる」
俺は開けた草原まで走ってから、足の裏に魔力を集める。昨日のドラゴン討伐で戻ってくる時以上の魔力はある。魔王城まで跳んでも戦う魔力は十二分にあるだろう。
(ヒーローは遅れてやってくるってか、柄じゃないんだけどな)
俺は魔力を一気に放出して空を飛んだ。空に上がったところで着地地点を計算しながら魔力を放出し、向きを調整する。
(どこに着地するか、やっぱ魔王城かな)
俺は魔王城の壁へと突っ込んだ。魔力で全身を覆って防御しながら突っ込んだので、俺は無傷だった。急いで魔力の膜を広げると運が良いのか、全員がその部屋に居た。イアンとリチャードは負傷していてソフィーの治療を受けている。ソフィーも怪我をしているように見える。アリアネルは魔王と思われる人物と対峙していた。
「遅かったじゃん」
アリアネルが軽口を叩いてくる。
「悪い。寝坊した。でも後は任せておけ。今の俺は禁酒二日目だ」
そう、今の俺は昨日酒が飲めずに寝てしまったので禁酒二日目の状態だ。寝まくったから体調が良い気がしないでもないが、そんな事は些細な事だろう。絶好調な俺は魔王に負ける気がしなかった。
(アリス、ステラ…帰ったら一緒に夕飯食べような)




