141. 勇者
ルークが勢いよく後方に戻った後も、私達は変わらず進軍し続けた。ルークが抜けた事により、索敵は制度が低下し苦戦を強いられたが、無事魔王城に着く事が出来ていた。
「この先だね、準備は良い?」
「ああ」
「大丈夫だ」
「良いよ」
私達は勢いよく扉を開ける。
「来たか」
そこには翼と角の生えた人が王座に座っていた。膨大な魔力量により存在感が増している。私はまず駆け出した。一番最初に魔王に切り掛かろうと飛び出した。良く集中できていて良い切り掛かり方だったが、魔王の持っていた斧で簡単に弾かれる。私が弾かれている間に魔王は詠唱をし、魔法を発動させた。魔王の発動した魔法はリチャードとイアンに向かっていた。
二人に当たる直前にソフィーが放った魔法とぶつかる。相殺は出来なかったようで、リチャード、イアン、ソフィーの三人は吹き飛ばされる。
そんな様子を横目に見ながら私は受け身を取ってから、魔王に切り掛かる。不意を突いたつもりだったが、余裕の表情で防がれる。剣を力一杯押しても相手の斧はびくともしない。
「ちょうど良い。勇者よ少し話さないか?」
「……何?」
味方が回復している間の時間稼ぎの為に、私は相手と会話する。
「私はな、生み出された時から絶望していたのだよ。俺の運命、行動、発言、気持ちまでも全てが決まっていた」
「?」
魔王が言い始めた事は理解出来る内容では無かった。
「私も違うと思っていた。思いたかった。でもいざその場面になるとその通りに行動してしまうし、感情も発言も違和感なくその通りになる」
「何を言っているの?」
「自分では何も決められず、ただ誰かの言いなりだったって事だ」
「今までしてきた事の言い訳でもしたいの?」
彼が今までしてきた事を正当化したい言い訳にしか聞こえなかった。
「私も抵抗したが、結果は今の様に自分の意志で言葉を話せる程度しか出来なかった。どんな行動をしても運命は収束する。決まった運命以外には最終的にならない。お前が勇者になる事も、ここに来ることも、私がお前に殺されることもな……」
相手の斧に力が入る。そのまま押されて私は弾かれる。私は受け身を取りながらすぐに立ち上がる。
「ふざけるな!と思ったさ…だから私はこの世界を壊して全て終わらせる事にした…それも運命かもしれないがな」
「…何を、お前は何も知らない。分かっていない!彼らは!この戦いで命を落とした彼らはそんな運命の為に死んだのでは無い!自分の意志で必死に戦たんだ!彼らの思いをバカにするな!…お前を倒して全てを終わらせる」
私は剣を持ち直して魔王に突っ込む。しかし剣を弾かれて剣から手が離れてしまった。魔王はそのまま振り抜いた斧の向きを変えて私に切り掛かる。
(油断した)
そう思った時、部屋の壁が崩れ落ちた。それに気を取られた魔王の隙を突いて私は剣を取りにその場を離れる。
「遅かったじゃん」
「悪い。寝坊した。でも後は任せておけ。今の俺は禁酒二日目だ」
ルークは壁を壊して私達が戦っていた一室へと侵入してきた。
(相変わらず言っている事の意味は分からないけど、これで魔王は必ず倒せる!)




