138. 記憶②
「何故、付いてきた?」
「私も戦う。パパならそうした」
「ステラも」
「…この銃があれば、私も戦える」
パトリシアお姉ちゃんに追い付いた時、怖い顔で理由を尋ねられた。私は一瞬言い出すのが遅れてしまったが、アリスとステラははっきりとすぐに自分の意見を言っていた。
「無理はするな。危なくなったら逃げろ…約束してくれ」
「「「うん」」」
そんな話をしていると茂みから魔物が現れた。話には聞いていたが、見るのは初めてだった。魔物の群れの奥から一人の男が現れた。パトリシアお姉ちゃんと同じで頭に角が生えていた。
「パトリシアか、久しぶりだな」
「…」
「あの取引は役に立ったか?」
「ああ、今となっては意味は無かったがな」
二人は知り合いみたいだった。話している内容は分からなかったけど、パトリシアお姉ちゃんが警戒しているのは分かった。
「双子を渡せ。雷撃の悪魔への切り札にする」
「断る!」
そんなやり取りの後、パトリシアお姉ちゃんは攻撃を始める。アリスとステラも周囲の魔物と戦い始めた。更に先の方ではパトリシアお姉ちゃんが言っていたドラゴンが暴れているのだろう、火の手が上がっていた。
(わ、私はどうすれば…)
飛び交う血や攻撃に怖くて蹲っている間にも戦いは続いていく。私は何もできないまま、ただ戦いを眺めていた。
そして私の横にパトリシアお姉ちゃんが飛んできた。口や胸から血を流していた。
「………にげ…ろ」
そのままパトリシアお姉ちゃんは動かなくなってしまった。
「パ…パトリシアお姉ちゃん!」
「まったく、手こずらせやがって」
私は何も出来る訳でもないが、急いでパトリシアお姉ちゃんに駆け寄った。
「…お前、ティナか……ああ、そういえば魔王様が死んだからとリストから外していたな。それで記憶が無くなってここに居るのか」
パトリシアお姉ちゃんに一生懸命声を掛けている間に、男は訳の分からに事を言い始めて私に近づいてくる。
「だめ!」
アリスが私を助けようと男に横から攻撃をしてくれる。しかしアリスは一瞬でその男に頭を殴られて吹き飛ばされてしまった。そして頭から血を流して倒れてしまった。
「殺さなければ、何をしても良いって言われてるんだよ」
男が私の頭に手を当てると知らない記憶が溢れてくる。頭の痛みに思わず蹲る。この場所で暮らした記憶がどんどんと上書きされていく。負の感情がどんどんと心を侵食していく。
「思い出したか?双子を運ぶ。手伝え」
(ああ、そうか、私はこの人の仲間なんだ)
全てを思い出して、全て分かった。私が今したい事も。私は、この場所で暮らした記憶と今思い出した記憶で今やりたい事が分かった気がした。
「私、幸せだったんだ」
「は?」
私が手伝えば、手伝わなくても双子を盾にされれば、あの男は殺され、双子も殺されるだろう。あんな幸せそうな人達を私は今、殺す側なんだと。
「私からこれ以上、もう何も奪うな!」
私は銃に魔力を込めてそれを発射する。衝撃で私は吹き飛ばされたが、相手の男も左腕を失っていた。もう片方の手で治癒魔法を掛けながら私の方を向く。
「…てめぇ、殺す!」
凄い殺気を受けて、恐怖で立ち上がれない。でもこれで良いと思った。カッコつけて死ねるならそれで。
そう思った時、物凄い衝撃音が男の後方で響いた。
「させねえよ!」
あれだけ強かった男が頭から血を流して倒れた。男の後ろには、いつの間にか雷撃の悪魔が立っていた。
(パパ!)




