137. 記憶①
私は昔の事を全く覚えていない。でも今が幸せなので気にした事は無かった。偶に唐突に不安になる時はあったが、その原因が分からなく怖くなった時には皆が暖かい気持ちにさせてくれたので安心する事が出来ていた。
「ティナ遊ぼ!」
「うん」
私にいろいろと教えてくれたアリスが遊びに誘ってくれる。私の知識の殆どはアリスとステラが教えてくれたものだ。
「ステラは?」
「先に外に行ってるよ」
「じゃあ、早く行こう!」
最近は鬼ごっこでも二人に追い付けるようになってきて、毎日が楽しくて仕方が無かった。それに不愛想だけど優しいパトリシアお姉ちゃんも居る。パパは数日前からお仕事で居ないけど早く帰ってくる事を楽しみにしている。
こんな幸せがずっと続くと、何も疑わずに信じていた。
その夜はいきなりパトリシアお姉ちゃんが起こしてきた。一緒に寝ていたアリスとステラも起こされていた。そしてパパにプレゼントして貰った銃を持たされて森の中を走らされてた。私は状況に付いて行けずにただ走っていた。
「ッチ!」
戦闘を走るパトリシアお姉ちゃんがいきなり止まった。
「アリス、ステラ、ルークに知らせろ。ドラゴンが居る。それに追手が予想より速い」
パトリシアお姉ちゃんが慌てた様子で二人に指示を出す。私は何を言っているのか分からなかったが、二人には通じたようで行動を開始していた。
「パパに知らせたよ」
「そうかそしたらお前らは逃げろ」
「だめだよ。そしたらパトリシアお姉ちゃんがドラゴンに」
「お前らが逃げる時間は稼げる。それに私は死なない。安心しろ」
私はそこでようやく状況が呑み込めてきた。誰かが私達を殺そうとしているみたいだ。
(…?)
何か知らない記憶が見えた気がして、急に足が震えだす。
(…何、これ?)
そんな不安な気持ちに襲われているとアリスに話しかけられる。パトリシアお姉ちゃんはもう来た道を戻って行っていた。
「ティナ行こう」
「でも、これがあれば、パトリシアお姉ちゃんを」
私にはパパに貰ったこの武器がある。強いパパがくれた武器だ。パトリシアお姉ちゃんの助けになると思った。
「あ、待って、ティナ」
アリスの言葉を無視して私は体内の魔力を操作して全速でパトリシアお姉ちゃんを追いかけた。暫くしてから二人も私を追いかけてくる気配を感じた。
(皆が居れば、パトリシアお姉ちゃんを助けられる。助けなきゃ)




