136. 異変
俺達は着々と魔王城へと近づいていた。
「今日はここで野営しよう。食事の準備をする」
「おうよ」
俺は保存食を焚火で炙って温める。ついでにスープを作って皆に配る。
「旅で温かい食事が取れるのは幸せだよな」
「そうなの?」
アリアネルが疑問そうに聞いてくる。前世では戦争の時、敵地ではこんなゆっくりとは出来ないだろう。火の明かりを頼りに襲ってくる魔物は居るが、魔族は何故か攻撃を仕掛けてこない。RPGのゲームには確かに夜の描写なんて無いだろうから、イベントでも無い限りは仕掛けてこないんだろう。そんなメタい事を考えていると皆の食事が終わった。
「今夜は俺が見張りをするぜ」
イアンが進んで見張り役を名乗り出てくれる。俺達は彼に任せて眠りについた。その夜、胸の辺りに熱を感じた。双子に片方を渡していた、危険を知らせる魔導具だ。
「皆起きろ!」
「どうしたんだ?」
見張りをしていたイアンが話しかけてくるが、俺は魔導具を耳元に当てる。魔導具は発動させると術者が魔力を止めない限りは周囲の音を拾って、もう片方の魔導具に送信する仕様にしている。謝って起動してしまった時や、双子が悪戯をしないようにする為の仕様だ。
『パパに知らせたよ』
『そうかそしたらお前らは逃げろ』
『だめだよ。そしたらパトリシアお姉ちゃんがドラゴンに』
『お前らが逃げる時間は稼げる。それに私は死なない。安心しろ』
俺は魔導具を耳に当てながら皆に状況を知らせる。
「後方で襲撃だ。ドラゴンも居るみたいだ」
魔族軍にドラゴンの様な魔物が居ない事が気になっていたが、俺達がある程度進んだところで後方を襲撃する為の戦力だったようだ。
「俺は戻る。お前らはそのまま進撃を続けろ。全員が戻っては敵の思い通りになってしまう」
「分かったよ」
「でも、アリィ、それだと」
「大丈夫だよ。ルークは必ず皆を助けてくれる」
「問答の時間が惜しい。俺は行く。片付いたら戻ってくる」
俺はそれだけ言うと足の裏に目一杯魔力を集める。魔力の大軍を討伐しておいて助かった。俺はそれを一気に放出する。今まで頑張って来た道を戻っている気分だが、早くしないと手遅れになる。
『ティナ行こう』
『でも、これがあれば、パトリシアお姉ちゃんを』
『あ、待って、ティナ』
『お姉ちゃん行こう。パパならそうする』
素直に育ってくれて、人の助けになる事を率先して行おうとしてくれていて、育ての親として誇らしいが、今は逃げて欲しい。そう思う。
(昨日、酒を抜いとくんだった)




