130. 記憶喪失
ティナは全ての記憶を失っていた。喋れず、歩けず大変だった。夜泣きも酷く、しょっちゅうおねしょをしたりと、まるで赤子の様になった。魔族が何か魔法を掛けていたのかもしれないし、他の理由かもしれないが、結局原因は分からなかった。
彼女は他の捕虜と違って忠誠心など欠片も無かった。ただ死にたがっていた。そんな様子を見て同じ年頃の子供を育てている身としてはどうしても放っておけなかった。彼女を捕虜から解放し、治療をしてしまった。軍人としては甘い対応と言われるだろう。対外的には何も話さなかったので殺した事にしてある。
その後も双子が一生懸命に世話をする事で、一月で年相応の少女に戻った。記憶は失ったままだが。
「パパお代わり!」
「ステラも!」
「パパ!私も!」
アリスとステラが俺の事をパパと言うからか、ティナも俺の事をパパと言い始めた。呼び方はどうでも良いとして、元気になってくれた事に一安心だ。生活は安定してきたが、偶に夜寝ている時にうなされている姿を目にする。それと、この銃だ。恐らく異世界人が関与しているか、ティナ自身が異世界人なのだろう。
(俺も生まれた環境が違えば、この子の様になっていたのだろう)
それもあってか、ティナの事を何だかんだで気にかけて、甘やかしてしまう。
「お前ら早く寝ろよ!」
「私、今日はパパと寝たい…」
「ずるいステラも」
「アリスも!」
一つのベッドで四人ぎゅうぎゅう詰めで寝る。そんな日々を過ごしていた。
俺はティナが自分の身は自分で守れるようにと彼女が持っていたスナイパーライフルを改造する事にした。
(レールガン、男なら憧れるよな)
二つの電極を作って、それに魔石から魔法で電流を流す事で、金属の銃弾を高速で発射させる。それを小型化させて彼女の持っていた物の内部を改造して取り付ける。
(完成だ)
彼女の魔力量だと数発しか打てないが、彼女が身を守るぐらいの威力は出る。
「これがお前の新しい武器だ」
「パパ、何これ?」
「…やはり、記憶が無いか」
この銃を扱えるように、腕の筋力や足腰の筋力を鍛えさせる。記憶が無いお陰か、子供の様に素直に従ってくれる。幼い頃から鍛えているアリスやステラよりは才能が無い様に見えるが、恐らく鍛え方が悪かったのだろう、成長速度が速いという、言い換えれば良いセンスを持っている。種族の違いによるものだろうがこの分ならすぐにでも自分の身は自分で守れるようになるだろう。
(後は記憶か。思い出す方が良いのか悪いのか……酒飲みながら考えるか)




