128. 暗殺者③
「…え?」
私は気が付くと仰向けに倒れていた。立とうとしても手足に力が入らなかった。痛みを感じた時に周囲に人がたくさんいる事に気が付く。
「…い……たい」
「回復魔法を掛けてやれ」
暫くして痛みは消えたが手足は動かせなかった。手足を切断されていた。周囲を囲んで居る人達に切られたのだろう。気が付かない内に切られていた。すごい腕だ。こんな人達が居るなんて情報、貰っていなかった。
「私は、殺されるんですね」
「…その前に情報を吐いてもらうがな」
目の前には雷撃の悪魔が居た。こめかみに血の跡があるので私の攻撃が当たったのは確かだが、どういう訳か彼は生きていた。距離が遠くて威力が出なかったと、瞬時に自分の中で解決する。しかしこの状況は計算された状況に思えてならない。どこからこの男の掌の上で踊らされていたのだろう。
(ああ、そんな事より、やっと…これで)
私は口に布を巻かれて自決できないようにされてから、周囲に居た人達によって運ばれた。
(そんな事しなくても、自分で死ぬ勇気なんて無いのに…)
砦内の小さな部屋に運ばれた後、私はひたすら尋問され続けた。何日経ったのか、結局私は黙秘し続けた。喋ってしまっても良いかと思ったが、何故か口を開こうとしても口が動かなかった。もう会う事は無いと思っていても、裏切った後の報復が怖かったんだと思う。
「…ティナ、随分粘っているようだな」
「…どうして…私の名前を」
「こちらにも情報収集は出来るからな。それより、話す気になったか?」
「……」
「はあ、趣味じゃないんだけどな」
雷撃の悪魔は私に手を翳した。何か暖かい物が体を包んでいくのを感じる。恐らく魔力で包まれたのだろう。その後、脇腹に激しい痛みを感じる。ナイフで刺されていた。
(喋らないから殺されるのか)
ナイフを抜いたと同時に回復魔法を掛けてきた。腕が良いのか傷跡は残っていなかった。激しい痛みの感覚だけが残った。
(…すごい、拷問し慣れてる)
「これでも話そうとしないか。話さないのか、話せないのか」
「…なんで、殺して、く、くれないんですか?」
何故か尋ねてしまった。声を発した後に自然と涙が流れてきた。止めようと思っても止まらなかった。何の涙か、嬉しいのか、悲しいのか自分の感情が分からなかった。
「…え、なんで?」
雷撃の悪魔は私を見つめ続けていた。
「………おい、居るか?」
「はっ!ここに」
「氷魔法でこの部屋を冷やせ!それからティナはこれを飲め」
部屋が急激に寒くなり始めたと思ったら口に何かの液体を入れられて、意識が遠のいていく。
(毒ってもっと苦しんで死ぬものだと思ってた)




