124. 撤退
『た、隊長!じ、じ、地面がいきなり』
「どうした。落ち着いて報告しろ」
言葉で落ち着かせながら俺は薄い魔力の膜を広げて海に居た魔物を殲滅した。
『地面にいきなり穴が開いて大多数が落ちました。負傷者多数です』
「その場を放棄して直ちに撤退しろ」
『はっ!』
「第三中隊隊長応答しろ!ピーター!」
『…』
「トム!第三中隊の連中も撤退させろ」
『はっ!』
判断を間違えた。海より陸へと向かうべきだった。俺は薄い膜を第三、第四中隊が居る場所まで広げて現状を把握する。地面に大きな、かなり深い穴が開いていた。穴の先はどこまで続いているのか確認出来なかったが、森の方へと続いている。またその穴の中には多数の魔物が居て、落ちた兵士たちは応戦していた。
「しくじった。…お前らも撤退だ。第二本部の撤退を援護しろ」
「「はっ!」」
俺はかなり遠距離だが、大きな穴の中に居た魔物の頭に雷の矢を発生させて消滅させる。その時、目の前から急速で接近してくる物体を確認する。俺はそれをギリギリで躱す。
(銃か?)
発砲音が聞こえなかったのでかなり遠くからの狙撃だと判断できる。執拗に俺の事を狙ってくる。俺は急いで敵の位置を探る。射撃の弾の飛んでくる位置から、想定される方向に魔力の膜を伸ばす。しかしなかなか見つからない。暫く探っていると銃撃が止んだ。
(…逃げられたか)
狙撃手を追うのを止めて第三、第四中隊の撤退への援護へと向かった。早くしないと死人が増える。急いで大穴の空いた場所へと急行した。大穴に着いた時、そこには死者以外は居なかった。生存者は全員無事に撤退できたようだ。俺はその場に残っていた魔物を討伐しながら、皆の後を追った。
「全員状況の報告を!」
『第一中隊、本部に合流。死傷者なし』
『第二中隊、本部に合流。死傷者なし』
『第三中隊、撤退を開始。負傷者十、死者五。第四中隊も撤退を開始。負傷者十、死者二。』
「そのまま後退して第三合流ポイントに向かえ」
予め決めていた撤退ポイントに向かう指示を出す。古びた砦がある場所だ。
(それにしても第三、第四中隊はほぼ全滅か)
第三中隊は一人を除いて死傷、第四も四人を除いて死傷していた。失態だ。後悔を後でする事を心に決めて、村や双子、パトリシアの無事を確認しに向かう。
「パトリシア!無事か?」
『大丈夫だ。予定地点に無事付いた』
第三合流ポイントの砦より後ろにある場所に避難するよう予め決めていた。無事に避難が完了したようだ。
(ひとまずは安心だ。……酒飲んで忘れたい失態だ)




