122. 居座り
結論から言うとパトリシアは魔界に居座った。
「私に二人は任せておけ」
「パトリシアお姉ちゃんありがとー!」
「ありがとー!」
「はぁ~」
そんな感じでパトリシアは双子の可愛さに負けてしまった。
(…護衛用ではなく戦闘用の人形でも作るか)
俺もここを離れる訳にはいかないし、他に頼れる知り合いも居ない。それにパトリシアは強いので仕方なく任せる事にした。
「それより今までどうしてたんだよ」
「変装して冒険者として働いていた。腕は鈍っていないぞ」
パトリシアが元気に暮らしていた事は分かった。
俺は翌日から家の補修を始めた。流石に立て直すのは時間が掛かりすぎるので、地下に避難路を作成して、もしもの時はここに隠れるようにと毎日のように言い聞かせた。
「そんな事より私と模擬戦してくれ」
「…分かったよ」
パトリシアは何年経っても好戦的な性格は変わらないらしい。俺とパトリシアは向かい合う。今日はアリスが開始の合図を出してくれるらしい。
「よーい、スタート!」
俺はアプリを起動してデコイを発生させる。デコイに先行させてパトリシアと交戦させる。俺は気配を消して後ろに回り込む。俺が後ろから切り掛かるとパトリシアは横に飛んで距離を取る。
「相変わらず面倒くさい戦い方だな」
「どうも」
俺は雷の矢で逃げ場を無くしてからデコイを突っ込ませる。交戦しているデコイの背中からジャンプして上からパトリシアに切り掛かる。こちらに気を取られた瞬間にデコイがパトリシアの足を払う。俺はそのままハルバードをパトリシアの首に突き付ける。
「そこまで!」
アリスの合図で俺はハルバードを収める。そしてパトリシアに手を差し出す。
「やっぱりちょっと腕が鈍ったんじゃないか?」
「…うるさい!」
そしてその日から毎日パトリシアとの模擬戦をする事になった。俺とパトリシアの戦績は五分五分といった感じだ。初戦以降は良い戦いが出来ていると思う。
(久しぶりの戦い方だったからか)
俺の戦い方は初見殺しだ。初見の相手には有効だが、二戦目以降は対策されて実力の勝負となる。単に移動速度にランダムな緩急をつけられるとそれには対応しにくくなる。格上にも対応が可能だが、取り逃がして情報を持ち帰られると厄介な戦法だ。
(何か実力を底上げする戦い方も考えないとな)
パトリシアとの模擬戦は色々な事を考えるきっかけになる。正直認めたくはないが、ここにパトリシアが居座ってくれたのは俺にとっても正解だったと言わざる負えない。
(酒に合う新作料理でも振舞ってやるか)




