111. 近況②
暫くは優勢の報告が入ってきていたが、段々と押されてくる。
「IからP小隊と交代だ。撤退しながら入れ替われ。仲間を後ろから撃つなよ!」
『『『『はっ!』』』』
「お前らがへばったら次は俺が出る」
『はいはい、それまでには片づけますよ』
部下に指示を出していると周囲に密偵の気配を感じる。
「見つけたか?」
「崖の上から魔物を操っていました。ここです」
机の上に並べられた地図を指さして教えてくれた。
「敵の魔族を見つけた。俺がサクッと討伐してくる。指揮は第一中隊のポールに任せる。負けるなよ」
『了解です』
戦況を考えるとどの部隊も動かす事が出来ない。魔族は魔力量が多く厄介だ。俺が動くのが一番良いだろう。俺は本部を後にすると密偵が教えてくれた崖に移動する。
「今回の首謀者はお前か」
「…誰だ?」
俺は答えずに魔法で雷の矢を魔族の頭に発生させ、消滅させる。だが、空気中と自身の体内の魔力の流れを読んだのかこの攻撃は躱される。
「お前、雷撃の悪魔か」
「…なかなかやるな」
俺は一度全魔力を使って襲撃してきた魔物の群れを一瞬で殲滅した事がある。それから敵には雷撃の悪魔などと呼ばれるようになった。二つ名持ちというやつだ。
俺は敵の実力を見てアプリを起動させてデコイを発生させる。武器を持ったデコイだ。俺のデコイもこの四年間で進化した。光の吸収を調節し、反射を変化させる事でデコイに色を付ける事に成功した。デコイと俺で同時に敵に畳みかける。相手の魔族は暗闇の中で見た事の無い攻撃に対してただ距離を取ろうとする。そこで気をこちらに取られている相手の背後に雷の矢を発生させると、見事に引っかかった。俺は両足両手を切り落として応急処置で回復魔法を掛ける。舌を切って死なないように猿轡を付けて拘束する。
「魔族を捕えた。魔物の統率が取れなくなるはずだ。気を付けろ」
『了解です』
第一中隊の隊長が返事をする。統率の取れていない魔物に後れを取るような鍛え方はしていない。これで勝利はほぼ確定となった。
「居るか?」
「はっ!ここに」
「こいつを連れて行って尋問しろ。情報を引き出せ」
密偵達は音も無く魔族を連れていく。
「さてと、終わった頃に戦場に向かうかな」
俺はのんびりと歩き出して戦場へと向かう。あわよくば戦闘が終わっている事を願いながら、今晩の酒の肴を考えながら歩く。このぐらい適当でないと四年も前線で魔物と対峙など出来ないだろうと俺は思う。戦場で狂っていく戦友達を何人も見てきた経験則だ。
(今日の酒は何を飲もうかな)




