110. 近況①
「…チッ、夜中に奇襲とはやってくれるじゃないか……状況は?」
神殿長を捕えてから四年が経った。タクステディア王国、二ルクス帝国とレッドクリフィア公国は一時休戦して対魔族の為の同盟を結んだ。同盟と言ってもそれぞれの国からの戦力が国境を超える事を認める事、互いの戦況や持っている情報を隠さずに報告しあう事など、本当に守られるか怪しい約束を結んだ程度だ。そして俺はタクステディア王国対魔族第二部隊の隊長を務めていた。最初から隊長だった訳では無く、周りがみんな死んでしまって自動的に隊長になった感じだ。異論があるやつが多くて力でねじ伏せるのが大変だったが、結果的に本拠地で踏ん反り返っているだけなので、苦労した甲斐がある結果だ。
タクステディア王国対魔族部隊は全部で五部隊ある。部隊とは四人の小隊とそれを四つ集めた中隊、中隊を四つ集めた大隊を一部隊としている。更に第一から第三が前線で戦う戦闘部隊、第四が総司令部、三ヵ国の代表が居る場所を守る護衛部隊。そして第五が補給部隊となっている。
そして俺が居る第二部隊は今、奇襲を受けていた。魔物の数、時間帯からして計算された強襲に見える。俺は第二本部で戦況を聞いて指示を出す。
「AからF小隊は魔物を最前で叩け。G、H小隊は魔法で援護。残りの舞台はAからHがへばった時の交代要員として待機。それから本部への報告は途絶えさせるな!」
『『『『はっ!』』』』
俺が耳に付けたイヤフォン型の通信機に向かって指示を出すと、元気の良い中隊長達の声が返ってくる。イヤフォン型の通信機とは俺がこの四年間で開発した自信作だ。
昔、王都の学園で教室に居ずらい時は、図書館で本を読みまくっていた。その時に魔石の加工方法について興味深い記述を見つけた。それは割った魔石同士は魔力的な固有の繋がりを持っている可能性があるというものだった。そこで俺は片方を受信機、もう片方を発信機として小さく加工する事を研究した。どういう原理かは分からないが、片方の魔石が発した魔力の波を空気の振動に見立てる事で音のやり取りを実現した。何でか分からないが、動くからヨシ!というやつだ。ただ、魔力を込めた声でないと声のやり取りが出来ない。扱うには練習が必要で、魔力の扱いもある程度鍛えないと扱えない。そこで俺は俺のイヤフォンと対になる物を中隊長達に預けて、現地に居なくても指示を各中隊に出す方法を確立した。
「その通信機は高いんだ。死んでも無くすなよ!」
『分かってますよ』
『隊長は相変わらずお優しい事で』
『了解です』
『はい、はい、了解でーす』
部下達の返事を聞きながら俺は魔力を込めていない声で周囲に声を掛ける。
「居るか?」
「はっ!ここに」
「魔物を操っている魔族が居るはずだ。見つけ出せ。見つけても手出しはするなよ」
「はっ!」
俺はここ魔界で戦争孤児を集めて密偵として育てた。四年もあれば密偵らしく立派に育った。お前らの様な孤児を増やさない為に協力してくれと説得したり、大変だったが。彼らにも密偵同士で連絡可能なように通信機を渡している。全部でかなり高い出費だった。
(早く終わらせて双子の寝顔を見ながら酒が飲みたい)




