11. 魔導車
森で生き物と追いかけっこをしながら日々を過ごしていたある日、母に王都に行くと言われた。
兄の入学式を見に行くのだという。母、兄、姉、俺の4人で行くらしい。父は領内での仕事がある為行けないと、とても残念がっていた。
(王都か、楽しみだな)
領内の街ですら、こっそり抜け出した時にしか行ったことが無かったため、王都と聞いてテンションが上がり思わずにやける。どれほど賑わっていて、どんな物があるのか、食事も名物などはあるのか。それに初めての遠出である。移動手段も気になり始めた。
出発は五日後らしい。出発日までの食事での話題はすべて王都についての話になった。父と母、兄は行ったことがあるらしく、いろいろな話をしてくれた。姉は初めて行くらしく、自分と同じく興味津々で聞いている。
「そういえば、どうやって行くの?絵本の中みたいに馬車に乗れる?」
移動手段について聞いてみた。
「王都は遠いから、魔導車で行くわよ」
「魔導車?」
母の回答に首を傾げた。
「魔石で大きな箱を動かしている乗り物よ。街の端にある駅という場所から誰でも乗れるのよ。ルークは初めてだったわね」
聞けば、兄姉達は乗ったことがあるらしい。前世でいうところの電車みたいな乗り物があるらしい。前国王の指示のもと開発された乗り物で、物流界に革命を起こした乗り物らしい。魔石と言われるものを動力源にし、車輪のついた大きな箱を動かしているらしい。
(魔石なんてあるんだ、魔物から採れるのかな)
いろいろな疑問が浮かんだが、この場ではよく分かっていない振りをしてスルーする。
(俺の他にも転生者がいたりするのだろうか)
それだけが近代化しているように思えて疑わずにはいられなかった。最大の疑問を考えながら、他にも食べ物や観光名所について質問した。
そして出発日当日。
「ルーク、行くわよ~」
母に呼ばれ、走って駆け寄る。駅までは馬車で行く。馬車にも乗ってみたいと言ったら用意してくれた。相変わらず経済的余裕はありそうだなと思いながら馬車に乗る。
出発してから窓の外を眺める。のどかな街だ。大自然に囲まれた街で、かなり広い。道路は整備されていないのか、結構揺れる。まだ見ぬ魔導車のことを考えながら馬車に揺られること20分、駅に着いた。
「これが駅!大きいし綺麗!」
「そうよ。ルークが生まれたときに建てられた、この街では一番新しい建物ね」
この場に似つかわしくない建物が建っていた。王都ではこのような建築物が主流らしいがこんな田舎では目立って仕方がない。
料金を支払い、ホームに向かう。魔導車は既にホームに居た。これもまた、この田舎には似つかわしくない乗り物だった。しかもどうやらここが終点らしく、ずっと止まったままになっている。
魔導車に乗り込む。中は新幹線のような座席配置になっていた。俺は見慣れていたが、姉は興味津々で見ている。
また、席は数日前から予約しておかないと乗れないらしい。俺たちは予約していた席に座る。
少しすると魔導車は動き始めた。どうやら時間ギリギリだったみたいだ。馬車と違い、速度は倍以上あり、揺れも少なく快適だった。王都までは六時間程で着くらしい。
快適な揺れに眠気を誘われる。自然と瞼が重くなる。目覚めたら王都だろう。そんなことを考えながら眠りにつく。
(こういう車内はやっぱ缶のハイボールだよな)




