108. キャロリンの苦悩⑦
私は平凡に暮らしたい。国の行く末にも興味ないと思っていた。でも、私の生まれた環境はそれを許してはくれなかった。裕福な暮らし、それは民の税で賄われている。それに対する民達への生活への責任が我々貴族には発生する。飢饉や他国の侵略、治安など様々な事に対する責任がある。考えだしたらキリが無い程、考える事はたくさんある。
(それに友達の悲しい顔は見たくないもの)
私は貴族の中でも位が高いのでさらに重圧があった。そこで私はまず、国内の癌、腐敗した貴族の排除をする為に様々な情報を集める事を日課としている。その為の密偵も自ら育てて各地に放ったりもしている。最終な目標はゲームでの黒幕とその仲間達の排除だが、これは一気にやらないと逃げられる可能性がある。
日々国内の情勢が不安定になっていく中のある日、屋敷の前が騒がしくなった。
「おーい、キャロリン!」
門の前で騒いでいるのがルークだと分かり私は門に向かった。私はブルスジルが罠に嵌められる情報を予め得ていた。ただその主犯格や動機が分からずに動く事が出来なかった。ルークがここに居るという事はブルスジルは落ち着いていると予想できるが、どの程度の被害が出たかはまだ報告を貰っていない。
(私、責められるかしら…)
私は責められやすい様に態とぶっきら棒に振舞う事にする。
「何よ、私も忙しいんだけど?」
「火急の要件だ」
真剣な顔で言われる。何か情報が欲しいだけでこの屋敷を訪ねてきたのだと私は予想する。立ち話もなんだと思い、ルークを屋敷内へと案内した。客室に着くと執事やメイドに外に出て行ってもらう。彼らは護衛が密かに室内に居る事が分かっているので素直に出ていく。
「単刀直入に聞く。今回の事は誰の差し金だ?」
「…はぁ~」
やはり今回の件の首謀者を知りたいみたいだった。彼は貴族ではないとは言え、今大変な状況であろう領内の事は良いのかと半分呆れる。
「気付いている事があるなら教えてくれ」
「まだ、いろいろ情報を集めている途中だけど、神殿長が怪しい動きをしていた事は確認できているわ。ただ、今回の暗躍と関係あるかは分からないわ」
確実な証拠があるわけではなく、まだ疑惑だ。ただこれを話せば彼も証拠集めに協力してくれる。そんな気がした。
しかし私の予想は裏切られる。
「なら、直接聞きに行けば良い」
そう言うと、彼は部屋を出て行こうとする。焦る気持ちは分かるが、何か違うようなものを感じ取り慌てて彼を止める。
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
彼は少し浮き上がると、そのまま滑るように屋敷から出て行った。
私は慌てて外出の準備をする。こういう時、貴族はいろいろな作法があり面倒くさいと思う。
(またあいつは面倒事を)




