107. 拘束
「単刀直入に聞く。今回ブルスジルを貶めたのはお前か?」
「…いきなりだな」
俺が直接要件を聞くと神殿長は一瞬目を見開いて驚く。
「そうだと言ったら?」
「罪を償ってもらう。これ以上被害が出ないように今ここで捕らえさせてもらう」
「……」
俺の言葉に神殿長は何かを考え始める。
「…それもありか」
「は?」
「そもそもお前は何故生きている?」
(やはりクリスと繋がっていたか)
神だのなんだのと言っていたので疑っていたが、恐らく予想通りだろう。クリスが今どこにいるのか忘れていた事に気が付いたが今は後回しだ。
「お前の部下が裏切ったんじゃないか?」
「ほう」
「信仰心なんてそんなものだろ」
神殿長は少し苛立たたしそうに顔を歪めた。少しこちらのペースに持ち込めたところで本題を聞く。
「お前の目的はなんだ?」
「…目的か、神の御言葉に従っているだけだ」
「またそれか」
何度も聞いた意味の分からない主張をしながら、神殿長は魔力を動かし始めた。すると部屋の奥にあった開いていた扉から犬型の魔物が湧いてきた。気が付いた時には背後にも魔物が居た。俺は咄嗟に部屋の真ん中まで移動して周囲を警戒する。
「お前、まさか魔族か?」
「正確には違うがな、そうかお前はそれも知っているのか」
話している間に俺は魔力の膜で部屋を覆い、魔物の頭と神殿長の腕に雷の矢を生成して消滅させる。魔物はその場に倒れ、神殿長も腕を抑えて膝をついていた。俺は神殿長の腕を治癒魔法で応急処置し、反対の腕を後ろに回させ、肩を抑えて拘束する。呆気ないが面倒くさいので後の尋問は衛兵に任せることにする。
「じゃあ、行くぞ」
「……」
俺は神官や巫女の驚愕の視線に囲まれながら神殿を後にする。近くの詰所まで行き、事情を説明して衛兵に神殿長を引き渡す。キャロリンの家に行き報告をしたらブルスジルに帰ろうとした時、衛兵が近づいてくる。
「ルーク・ブルスジルだな?」
「そうだが?」
そう答えた途端に衛兵たちが俺を囲み始める。
「神殿長殺害未遂で拘束する。抵抗するなよ」
「……は?」
思考が追い付かない内に拘束される。抵抗が出来ないまま、牢屋の中に連れていかれる。
「お前ら神殿長室の様子見てきてないのか?あいつは魔物を飼っていたんだぞ」
「…お前が魔物を連れ込み神殿長を襲った事は調べがついている。大人しくそこに入っていろ」
「神官や巫女が俺が入っていくところは見ていたはずだ。ちゃんと調べてくれ」
恐らく俺の主張は通らないだろう。誰かしらからの圧力で筋書きはもう決まってしまっているらしい。神殿長の確実な悪事の証拠が出てこない限り、俺の拘束は解けないだろう。
(しくじった。……酒飲んで全て忘れたい)




