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異世界禁酒生活  作者: 田中 太郎
第三章
106/223

106. 黒幕

 墓を作った後、俺は魔界に来ていた。今はこれ以上、魔界からこちらに魔物や人が移動しないように見張っている。魔物の場合は瞬殺し、人の場合は拘束して森の外に連れていく事を淡々とこなす。


(作業って感じだなぁ)


 領内の体制が整うまでこの作業を繰り返す。その内、俺が居てここが通れないと理解したのか、人が来る事は無くなった。魔物も討伐しすぎて数が少なくなっていた。魔力量で威圧する事で近づく魔物も居なくなってきたので、俺の役割は終わりだ。


「兄さん、こっちはもう大丈夫だと思う」

「ありがとうルーク。こちらの体制も整った。領の復興も何とかなるだろう」


 兄に依頼完了の報告をする。


「兄さん、忙しい今、申し訳ないんだけど少し休暇が欲しいんだ」

「……まあ、少し落ち着いてきたし、少しの間ならいいぞ」

「…ありがとう」

「あまり背負いすぎるなよ」

「ああ」


 俺は同じ異世界人のキャロリンからこの世界で起こる事は大体把握している。今回の事は本来無いはずの出来事だった。このイレギュラーが今後にどのような影響があるか確認をしに行かなくてはいけない。俺は全力で王都へと駆け出す。王都に着くと同時にキャロリンの家へと向かう。


「おーい、キャロリン!」


 門の前で騒いでいるとキャロリンが出てきた。


「何よ、私も忙しいんだけど?」

「火急の要件だ」


 真剣な顔で言うと何かを察したのか俺を屋敷内へと案内し始めた。客室に着くと執事やメイドに外に出て行ってもらう。


「単刀直入に聞く。今回の事は誰の差し金だ?」

「…はぁ~」

「気付いている事があるなら教えてくれ」

「まだ、いろいろ情報を集めている途中だけど、神殿長が怪しい動きをしていた事は確認できているわ。ただ、今回の暗躍と関係あるかは分からないわ」


 神殿長は裏ボスだと昔、俺にキャロリンは教えてくれていた。何か怪しい動きをしていないかキャロリンは見張っていたのだろうと予想が出来る。


「なら、直接聞きに行けば良い」


 そう言うと、俺は部屋を出ていく。今は領内の事もあり時間が無い。


「あ、ちょ、ちょっと待って!」


 キャロリンの声を無視して、俺はキャロリンの家を後にして大神殿へと向かう。大神殿は幼少期に一度来た以来だ。信仰なんてこれぽっちもしていなかった為、ここに来る予定は無かった。白い大きな建物が見えてきて俺は何の躊躇いも無く、中に入る。


「神殿長は居るか?」

「なんですか?あなたは?無礼ではありませんか?」

「どけ、神殿長はこの奥か?」

「…おい!待て!」


 神官が声を荒げているが、無視して奥へと進んで行く。一番奥の扉をノックもせずに開けて入っていく。


「まったく、王都の危機だってのに」


 神殿長は可愛らしい巫女と取り込み中だった。


「誰だ?」

「ルーク・ブルスジルだ。聞きたい事がある」

「おいお前!」


 俺に追い付いてきた神官が俺の肩を掴む。


「良い。お前達は出ていけ」


 神殿長がそう言うと神官と乱れた服を直した巫女は慌てて部屋から出ていく。


(さっさと終わらせて兄さんと酒が飲みたい)

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