105. 両親
領内の賊を倒して両親の元に辿り着いたのは、その数時間後だった。
「………う、そだろ?」
辿り着いた家の門の前には、両親の頭だけを持った男、縛られて膝をついた兄の首に刃物を突き付けている男とその周囲にもたくさんの男が居た。全員人質を盾に厭らしい笑みを浮かべている。ここに来るまでも散々見てきた。男は戯れに殺され、女は犯され、子供は暴力を振るわれていた。そんな状況と今の状況に苛立ってきた。
「お前だろ、仲間を殺して回っている奴は。武器を置いてそこに膝を付け」
「……くそが、さわ…るな」
怒りが沸々と湧いてくる。こいつらは領地を得る為だけでなく、虐殺や暴力を楽しんでいる。殺された人の中に見知った顔をいくつも見てきた。話しながら魔力の膜を広げていく。
「は?」
「……それ以上、皆に…触るな!」
俺は魔法を発動させて周囲の賊を一瞬で一掃する。すぐに両親の元に駆け寄る。二人とも殺意を剝き出しにした目をしたまま殺されていた。俺は目を閉じてあげて頭を抱きしめる。らしくもなく涙を流す。この世界で悪意にさらされず、ここまで成長させてくれた優しい両親。一緒に食事をして笑いあった両親。剣や勉強を教えてくれてこの世界で不自由なく暮らせるように育ててくれた両親。兄弟で悪戯をして叱られた事もあった。いろいろな思い出が一気に蘇ってくる。涙が溢れて止まらなかった。
「遅くなって…ごめ…ん。ごめん」
暫く後悔に苛まれていると、意識の戻った兄が話しかけてきた。
「ルークか、拘束を解いてくれ、領の皆を助けに行かないと」
決意に染まった目をしていた。両親の死に泣いて動けなくなっている俺と違って、領民の事を第一に考えていた。
「…兄さん…大丈夫だ、ここに来るまでに賊は殲滅させておいた。隠れている奴も殺したからそこまで焦らなくても大丈夫だ」
兄の拘束を解いてやりながら、俺のやってきた事を説明する。
「それでも、事後処理の指示を出す者は必要だろ」
「…兄さんは強いな。そうだな俺も手伝う」
兄を手伝う前に、俺は両親の体を回収して先祖代々の墓がある場所に向かう。両親の死体を火葬してから穴を掘る。丁寧に丁寧に作業する。穴に遺骨を埋めてやり、土を被せてあげる。そこら辺にあった岩を削って墓石を作って墓を作ってやる。
墓石の前で手を合わせて安らかに眠れるように祈る。神の存在は信じていないが、今ばかりは居ると信じていた。
(もっと一緒に酒を飲んで語り合いたかった。親不孝者だな、俺)




