104. 急行
「は~~~~」
俺は深呼吸をする。出血を止め、回復魔法を掛け続ける事で傷は塞がった。魔力の貯めはあるが、血の貯めを考えていなかった事が裏目に出ていた。咄嗟の事で対応が遅れた事と、傷が深かった為に血が足りなくなり貧血気味でふらふらする。
(空を飛んで向かうとあいつは気が付いて追いかけてくるだろうか……)
正体不明の裏切り者をクヌストールに留めておいて大丈夫か、俺を追わせて追いかけさせるのが良いかを考える。奴の正体が分からない以上、後者の方が安全かもしれない。
(それに時間もないか…)
覚悟を決めて、ふらふらしながら立ち上がる。足の裏に魔力を集めて一気に放出する。周囲に凄い音が響き渡る。斜め上に飛び立ちブルスジルを目指す。
(付いて来てくれよ、クリス!)
一時間もしない内にブルスジルが見えてくる。いろいろな箇所から煙が上がっている。
(見捨てて家族の元に向かうと叱られるだろうな…)
自分達の事より領内の事、そんな責任感の強い家族だ。生きている事を願いながら一番近い街に降り立つ。
「誰だ!」
賊に話しかけられるが無視して周囲の状況を魔力の膜を広げて把握する。あまり使いたくない手だが、今は時間が無く手段を選んでいる暇は無い。住人と賊の区別は簡単だ、縛られているかそうでないかと角があるか無いかだ。非人道的だが、角の付いた人の頭に雷の矢を発生させてすぐに消滅させる。一瞬で賊が頭から血を吹き出す。俺は抜かりなくそれと同時に賊から魔力を回収する。次の街の救助用の魔力にする予定だ。全滅した賊を見て俺は住人に声を掛ける。
「賊は一掃した。怪我人の治療は自分達でやってくれ」
俺はそれだけ言うと次の場所へと向かおうとする。
「…待って…ください!」
一人の女性が声を掛けてきた。見渡すと女性と子供しかいない。男は殺されたのかと瞬時に判断する。
「なんだ?今は時間が無い」
「…その、森に子供が、それで街の男達が…魔族の人達と一緒に森に…行ってまして、助けてください、お願いします!」
森に誘い込んで背後から殺す気か。俺は咄嗟に周囲の森に魔力の膜を広げる。魔力の消費を気にしている時間はなさそうだ。既に殺された気配もある。俺は街の賊を一掃したのと同じように魔法を発生させて賊を一掃する。ついでに脅威となりそうな魔物や獣も殺していく。
「片付いた。子供は無事だが、救えなかった人もいる。地図はあるか?」
「…?はい、持ってきます!」
女性が持ってきた地図に今森に居る人の位置に印を付けていく。彼女達が迷わないように道も線を描いてその通りに行けば良い様にしておく。その地図を女性に渡して俺は次の街に向かう。
(早く終わらせて酒が飲みたいのに次から次へと、まったく)




