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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第11章 反攻
78/78

第78話 一九三四年

 ダーマト海岸撤退作戦から三年が経過した。

 大陸を制圧したブロデア帝国軍は、海を挟んだグレートアロン王国を攻めあぐねていた。グレートアロンは面積こそ小さいものの周囲を海に囲まれており、歴史的に見ても海戦能力の高い国だった。そのため、海軍の脆弱なブロデア軍では真っ向から攻めることができず、もっぱら航空機による爆撃で対抗するしかなかった。

 爆撃によってグレートアロンは疲弊したかというと、まるでそんなことはなく、国民はひたすら耐え続けていた。爆撃機が接近していたら地下鉄へと逃げ込み、爆撃が収まると普段の生活へと戻っていく。

 あまりに効果が薄いと感じたブロデア軍は、世界初の大陸間を飛来可能なロケットを開発し、昼夜問わずグレートアロンへと飛ばすようになった。しかし、搭載する液体燃料の多さのせいで多量の爆薬を積むことができず、パイロットがいないため命中率も悪いロケットは思ったほどの効果を得ることができなかった。

 それでも攻撃の手を緩めれば、グレートアロンに戦力を蓄えされることになってしまうため、ブロデアは毎日爆撃機や飛翔体を飛ばし続けていた。


 グレートアロン王国の首都から車で二時間ほど移動した郊外に、レニ・ハイペリオンはいた。農村のはずれにある掘建小屋に住んでいる。

 ブロデアのロケット兵器も郊外までは標的に入っていないものの、時々狙いを外したロケットが近くまで飛来することがあり、畑や牧草地をえぐりとっていた。

 三年間、レニはずっとここにいる。

 戦線からは離脱していたものの、戦況に関しては情報を仕入れていた。

 ブロデアの快進撃は止まらず、不可侵条約を一方時に破棄し、今や東へと進軍を開始した。ロマノヴァ軍を次々に撃破し、順調に侵攻している。このままロマノヴァ連邦への進軍を継続していけば、来年には首都を占領できるだろう。

 一方、西のグレートアロン王国は、ダーマト海岸撤退作戦によって、数多くの兵器を失った。戦力の立て直しをしているが、三年でブロデアに並ぶだけの軍を編成できないでいた。

 海の向こうの大国に助けを求めているが、彼らはなかなか動いてくれない。


 レニの昼食は質素なものだった。

 固い黒パンに野菜クズを使った塩スープくらいだ。彼女が要求すれば、食料くらい調達可能なのだが、レニがそれを拒んでいた。

 自分だけ特別な食事を食べるわけにはいかない、と考えていた。ただでさえ、メックという高価な兵器を持っていて、維持するだけでもコストがかかる。そんな人間が贅沢な食事をすることはできない、という、ある意味での罪滅ぼしとも言える。


 昼食の片付けが終わって一息ついた頃、外が騒がしいのに気付いた。遠くから馬の蹄の音と、車輪がガラガラと回る音がする。

 外に出てみると、農村のデコボコ道を馬車が左右に揺れながら走っていた。真っ白な馬車で、所々金で装飾されている。もっとも目を引いたのは、御者台の上に金色のライオンのエンブレムだった。

「あれがエンディミオンの馬車」

 金色のライオンは、グレートアロン王家エンディミオンの紋章だ。

 掘建小屋の前で止まると、御者が言う。

「レニ・ハイペリオン様、お迎えにあがりました」

 ついに準備が整ったのだ、とレニは思った。

「わかりました。行きましょう」

 レニが乗り込むと、馬車はすぐに走り出す。

 道が悪いからどうしても揺れてしまうが、乗り心地は案外悪くなかった。

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