第54話 冠を戴く少女
1930年7月10日、互いに新型メックを投入したブロデア帝国とエルフェン共和国が激突した「フォルネの戦い」は、指揮官のカミラ・ローゼンハイムの撤退によって幕を下ろした。
ブロデア帝国はエルフェン領への侵攻を諦めたが、戦争は継続させていた。レディスト王国は開戦から2ヶ月で降伏し、ブロデアに占領された。
援軍を派遣したグレートアロン王国は、フォルネの戦いで10騎のメックを失ったものの、その後も数度に分けてメックの派遣を行い、ブロデア帝国に抵抗している。
ブロデア帝国の侵攻を警戒し、各国が軍備を進めていく。大陸に暗い影を落としながら、戦争は着実に拡大していった。
1930年12月20日、エルフェン共和国領内の城で戴冠式が行われた。
教皇によって冠を戴いたのは、16歳の黒髪の少女であった。
「私はレニ・ハイペリオン……ハイペリオンの女王である」
その言葉と共に、ハイペリオン王家の復活を内外に明らかにしたと言われている。
世界は新たな戦乱の時代へと突入しようとしていた。
1930年、レディスト王国へ侵攻し、同年の間に占領したブロデア帝国は、その勢力圏を着実に拡大させていた。
フォルネの戦いで新型メックを失ったものの、メック開発では他国よりも技術力は先行していたため、戦闘においては無類の強さを発揮していた。
確実に勝利を重ねていたが、ブロデア帝国には3つの懸念があった。
1つは、海の向こうにある島国のグレートアロン王国。ブロデアは海に面している面積が少なく、歴史的にも海での戦闘は重視していなかったため、海軍力の低さからグレートアロンへ攻められずにいた。
2つ目はロマノヴァ連邦。ブロデア帝国からはるか東に存在しているロマノヴァ連邦は、広大な土地と数多くの人民を抱えている大国で、このまま領地を拡大していけば、いずれ激突することになると予想されていた。
そして、3つ目はエルフェン共和国の存在だ。妖精の国とも呼ばれるエルフェン共和国は、歴史的に見ても土地の全てを他国の占領を許したことがない国家としても知られており、ブロデア軍最強のデュナミスであるカミラ・ローゼンハイムが敗北したこともあって、それ以上手出しができないでいた。
ブロデア帝国は、エルフェン共和国の土地を避けるように、東西へ進軍を開始していた。




