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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第7章 7月10日
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第48話 レニの朝

「ブロデアから新型メックの出撃を確認しました!」

 朝食を食べ終わったレニたちに報告が入り、城の中は一気に慌ただしくなる。

「ついに始まるのね」

 あと数時間で戦闘が始まる。おそらく今度の戦いは今までのメック戦とは異なるものになる、と思われた。相手の新型機を投入しており、数もブロデアの方が上回っている。


 ——もしかしたら、今度は……


 こちらにはレオもヴァイスザッハもいる。二人とも新型メックに乗っており、ハイペリオンだって改修されて確実に性能が上がっている。

 それでも、不安は拭えない。

「レニ様、戦闘はおそらく昼過ぎになるかと思います」

 さすがのヴァイスザッハも緊張を隠せないようだ。

「準備をなさってください」

 そう言い残すと、ヴァイスザッハはその場を立ち去った。


 みんな慌ただしく、自分の仕事を全うしようと動いている。

 そして、レニだけが取り残された。


 ——私にできることは。


 レニにはメックを整備できるだけの知識もなければ、戦略を練られるほど軍事に精通していない。

 できることは、可能な限り万全の体力を維持することだ。メックの性能を最大限発揮できる状態にしておかなければならない。体を休めておくとか、体を温めておくとか、それが最善である。

 だが、レニにはそれができなかった。どうしても落ち着かず、気持ちが焦ってばかりいる。

 考えた末、フローラに頼んで昼食の用意を手伝うことにした。さすがにフローラも怪我をさせたら危ないと思ったのか、最初は断っていた。

「レニ様がそんな……」

「お願い、何かしてたいの」

 ついにはフローラも折れ、厨房で一緒に作業をすることになった。とはいえ、出撃前だからあまり重い食事はできない。軽めの食事を食べて、メックに乗り込まなければならないからだ。

「あのパストラミサンドはどう? マスタードたっぷりの」

「いいですね、それにしましょう。出撃するデュナミスと後方支援で戦場へ向かう兵士の分は少し早めに作ります」

 レニも父親の食事を作る時に、よくパストラミサンドを作っていた。特に小屋に籠もっている時は、手軽に食べられる方が好きだったようだ。

 フローラと二人で、淡々と人数分の料理を作っていく。


 正午前、食事が出された。レニの作った物はフローラの物と比べてやや不格好であったが、みんなマスタードの辛さに顔を歪めながらも、サンドウィッチにかぶりついていた。

 食事が終わろうとしていた時、ヴァイスザッハはレニの元へやってきた。

「レニ様、準備はよろしいですかな?」

「ええ、料理を作ったら気分が落ち着いたわ」

「では、出撃前に一言お願いします」

 彼らは、レニの言葉を待っていた。彼女の言葉で出撃しようとしている。

 レニは近くにあった工具箱の上へと飛び乗って、兵士たちを見回す。みんなの視線が集まってくる。レニには演説の経験もなければ、自分でも才能があるとさえ思っていない。


 ——自然な言葉を言えばいい。


 咳払いを1つすると、レニは口を開いた。

「これから……私たちは戦いに行きます。きっと、今日の戦いは今までにない、激しいものになると予想されます。決して、勝つとは限りません。しかし、私がいる以上、負けることはあり得ません」

 どうしてそんな断言ができたのか、レニ自身にも分からなかったが、次の言葉が自然と出てきた。

「私はレニ・ハイペリオン。ハイペリオン王家の王位継承者です。ハイペリオンの一族は絶えたと言われていますが、私は生きています。私が生きている以上、ハイペリオンは滅びません」

 そして、一呼吸置いた後、レニは言った。

「勝利は常にハイペリオンのものです!」

 兵士たちの心がレニの元に集まった瞬間であった。

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