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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第7章 7月10日
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第47話 ブロデア軍出撃

 ブロデア帝国の新型メックのヴリル・ジェネレーターがうなりを上げる。リアはジェネレーターの轟音が響き渡る度に、心臓の鷲掴みにされて全身の毛が逆立つような気さえする。

 何度聞いても慣れない音だったが、今日は聞こえ方が違った。いつもは悪魔の叫び声にも聞こえるジェネレーター音が、勇ましい騎士の雄叫びに聞こえた。


 ——ようやく仇を。


 待ちに待った日である。それを自覚すると、リアは体温が上がっていくのを感じる。

 ここ一週間は、イルマ・ハイゼを目の前で殺されたことにうなされながらも、仇を討つことばかりを考えていた。訓練は厳しいものであったが、それでも耐え抜いてきた。お陰で新型機の動きにも慣れ、メック戦についての技術も身に付けることができた。


 そして、いよいよ出撃の朝を迎えた。リタイアすることなく、自らがシュライと名付けたメックに乗り込もうとしている。

 シュライの腰部には、他の新型にない機関を備えていた。それはエネルギータンクだが、メックを動かすためのタンクではない。いざという時に、白いメックを巻き込んで自爆するためである。

 白いメックの強さを、近くで見ていたリアはよく知っている。あのメックは、それまでのメックとはまるで違う次元の強さだ。リアはイルマの模擬戦相手を努めてきたとはいえ、白いメックに真っ正面から戦って勝てるとは思えない。

 ならば、リアにできることは、可能な限り白いメックを消耗させ、カミラが有利になるように戦うこと。自爆もその手段の一つでしかない。リアがカミラに願い出て、実現した。


 ——この命を捨てて白いメックを討てるのなら、安いものだ。


 生きて祖国に帰るつもりはない。涙はイルマを殺された時に流し尽くした。彼女の心は、すでに決まっていた。

 胸部コクピットに乗り込む。

「ダイブ!」

 機体と同化する。リアの柔らかい女性の体は、一瞬にしてヴリル・エネルギーの流れる金属の巨体と結合していった。


『ついにこの日がやってきた』

 カミラからの通信が入ってきた。

『今日という日は、新型機の実戦投入した日ではなく、ブロデアの勝利した日となるだろう。この戦いに勝利したブロデアは、さらに勢力を拡大させることができる。今まで落ちることがなかったエルフェンでの戦いに勝利することの意味は大きい……ブロデア帝国の行く末は、我々5名の働きにかかっている』

 カミラの声には、緊張は表れていなかった。

『祖国のため、各人の奮闘を祈る』

 通信が切れると、ジェネレーターの駆動音が高くなる。


 ——イルマ様、もうすぐお側に参ります。


 シュライが最初の一歩を踏み出した。

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