第46話 【幕間】エルフェン共和国メック開発者の手記
私は子供の頃、勇ましい英雄たちの物語が好きだった。かつて実在したと言われる英雄の冒険譚は、大なり小なり誇張や空想は入っているものの、本当にこんな人たちが存在したのかと、幼い私は胸を躍らせたものである。
だが、あながち物語の登場人物が空想上の存在ではないかもしれない。それはデュナミスである。デュナミスは、普通の人間にはない力を持っている。ある者は身体能力であったり、知能であったり、特殊な能力であったりするのだが、その能力がきちんと研究され始めたのは近年になってからなのである。
私はデュナミスではなかったが、勉強をしてメック開発に携わるようになった。
それは仕事にもだんだん慣れてきたある日であった。私の前にある男性がやってきた。ゲルハルト・ヴァイスザッハという名のデュナミスは、私にある設計書を見せてきた。
「君はこれをどう見る?」
彼が私を試そうとしているのだと思った。
設計書は新型のメックのものであったが、それを見た途端に私の記憶に蘇ったのは、幼い頃に聞いた冒険譚であった。もっともお気に入りだったのは、ユニコーンを模した兜で戦場を駆け抜けた王の物語であった。
「これはまるでハイペリオン王です」
私の答えに、ヴァイスザッハ卿は満足し、新型機開発チームの一員に任命された。
そしてついさきほど、新型機2騎とメックの部品を完成させたところである。新型機は今までのメックの常識を覆すような戦闘力を誇っており、まさにメックの革命とも言える存在であった。
しかし、私が気になったのは、2騎とは異なるメックの部品だけを造ったことである。メックのフレームはどこかにあるようで、白い装甲や追加のヴリル・ジェネレーターを生産した。メックの全体像は設計書で見ただけで実物を見たわけではないが、この部品を付けるメックが特別な存在であることが容易に想像できる。
ヴァイスザッハ卿に確認したわけではないのだが、これはハイペリオン王のためのメックなのだ、と感じていた。それにしては機体の雰囲気が女性的なのが気になったが、それ以上にハイペリオンの一族がまだどこかで生きていたことが嬉しかった。
このところずっと働きづめで、これから泥のように体にまとわりついた疲れを落とすために寝るのだろうけれど、きっと私の夢には白いメックに乗ったハイペリオン王が登場してくるに違いない。もしかしたら、ハイペリオンの女王かもしれないが、新しい冒険譚を見るために、今日は休もうと思う。




