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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第6章 出撃準備
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第44話 宴会の夜

 新型メックが完成した夜は、翌日が休みということもあり、ビールや料理が振る舞われた。特に整備士たちはこのところ働きづめだったこともあり、突然の宴会にみんな喜んでいた。

 ベルグもビールは好きであったが、明後日には出撃のために気持ちが高ぶり、酒も食事も喉を通らなかった。

 レヒトやリンクはさすがに暇そうにしており、宴会の賑わいから離れたところにいた。

 リアも酒を飲める年齢ではないが、食欲はしっかりとあるらしく、いつも以上に食べている。ベルグとは違い、出撃前だという緊張はあまりないようだ。


「楽しんでいるか?」

 いつの間にか、カミラが背後にいた。

「しっかり飲み食いしておいた方がいい」

「戦う前と後、普段と同じように食えるようにしろ……そう父に教わりました。しかし、私にはどうやらできないようです」

「そうだ。いつでも普段通りにしている人間こそが、いざという時に力を発揮できる。特に命のやりとりの場面では、その差は決定的だ」

 ベルグにもそれが分かっている。普段通りを意識していたはずだったのだが、白いメックに敗北したことがきっかけとなっているのか、戦闘を前にすると緊張してしまう。

「我々は……」ベルグは言った。「白いメックに勝てるでしょうか?」

 不安から漏れた質問であった。

「愚問だな」

 カミラは迷わず答える。

「我々は勝つ、必ずな」

「しかし、白いメックは……!」

「私はな、メック戦で負けたことは一度もない。実戦でも模擬戦でも、装甲を破損させたことさえない。そして、ベルグ……卿が負けたのはメックの性能差ゆえのこと。今は新型メックを手に入れた」

 だが、それでもベルグの不安は拭えない。その正体が何なのかさえ掴めない。

 もちろん、カミラの圧倒的な強さはベルグも幾度となく味わった。にも関わらず、完全に不安を振り払えることができない。

「安心しろ、白いメックは私が相手をする。卿が一騎打ちをことはない」

 ずしり、と両手に重さが加わるのを感じ、視線を落とすと、皿に載ったアイスバインを持っていた。

 自分は元々持っていなかったし、近くにもなかった料理を、いつ誰が持ってきたのだろう。


 ——何かが起こった。


 しかし、その肝心の何かが分からなかった。

「出撃の日までに万全の状態に仕上げておけ。出なければ置いていくぞ」

 カミラが去った後、アイスバインに噛みついた。

 きっとこのアイスバインはカミラが渡したものなのだろう。知覚できない能力を持っているカミラが上官にいるなら、今回の戦いは勝てるかもしれない。

 そう思えるようになると、徐々に食欲が出てきた。アイスバインを黒ビールで流し込むと、それまで悩んでいた気持ちがゆっくりと溶けていくようであった。

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