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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第6章 出撃準備
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第43話 3騎の新型

 7月9日、2騎のメックが城に運ばれてきた。銀色の装甲の機体と、青い装甲を持つ機体であった。

「これは……」

 レニは思わず声を漏らした。その2騎の姿は従来のメックより細身であった。中性的な感じもするが、ハイペリオンと比べればやや男性的な感じもする。

 関節や装甲は動きやすさを重視しており、ハイペリオンと同等の動きができそうだ。どちらもシールドは装備されておらず、装着できるような機構そのものが排除されていた。

「驚きましたかな?」

 レニの背後からヴァイスザッハが声をかける。

「ハイペリオン以外にもこんなメックがあったのね」

「ええ、密かに造っていました。とはいえ、まだ2騎だけしか完成していませんが」

 ハイペリオンに乗ったレニだからこそ分かる。たかが2騎とはいえ、ハイペリオン並の性能のメックは、戦況を大きく変えてしまえるだけの影響力がある。

「このメックには私も乗ります」

 ヴァイスザッハはメックを見上げながら言った。

「出撃するのね」

「ブロデアでも新型メックが完成した、という情報がありました。戦闘は明日、7月10日になると思われます」

 前の戦闘が終わったばかりだと思っていたのだが、すでに次の戦闘がすぐそこまで近付いていた。

「今度も勝てるかしら……?」

「どうでしょうな……正直なところ私にも分かりません。いずれにしろ、全力で戦うだけです」

 ヴァイスザッハは銀色のメックへと近付く。

「やはりそちらに乗るのね、銀光のヴァイスザッハ」

「こちらが私の愛機ラスコーンです」

 レニには、ラスコーンが戦場を駆ける姿が想像できていた。2本のスラヴァーを振り回し、いかなる敵をも切り裂き、退ける守護神のような雄大さと恐怖を敵にも味方にも与える、そんな存在になるであろう。


 となると、気になるのは青い装甲のメックである。いったい誰が乗るのだろう。

「こっちのメックは?」

「それは俺乗る」

 いつの間にかレニの隣にレオがいた。

「レオが?」

「そう、俺が乗る。機体名はセプシオンだ。ここ何日かずっとメックの調整ばかりでな、体が鈍って仕方がない」

 レニが口を開きかけた時、レオがそれを遮る。

「前にも言ったが……命の恩人のためなら命を懸けることだってできる。それに、これはエルフェンの戦いでもあるんだ」

「……ありがとう」

 だが、ヴァイスザッハは安心できない、と言う。

「敵は新型機を5騎揃えています。こちらはメックの数の点で大きく劣っています」

「やつらはハイペリオンを狙ってくる」レオは言う。「下手するとレニが3騎相手にしなければならなくなるかもしれない」

「不利ね……」

 彼女がそう漏らすのも不思議ではない。メック戦の基本は1対1であり、2対1では相当実力差がなければ数が多い方が勝つ。まして3対1では、単騎に勝つ見込みなど全くない。

「この不利を打開する方法はある?」

 レニの問いにヴァイスザッハは答える。

「方法になるかどうか分かりませんが……ハイペリオンの様子を見てみましょうか」


* * * * *


 数日ぶりに見たハイペリオンの姿は、それまでのものとは大きく変わっていた。

 シールドは外され、左腕の損傷も修理されていた。全身の装甲は新しいものへと交換されていたが、もっとも特徴的だったのは、頭部から伸びた一本の角であった。

「ユニコーンはハイペリオン王家の紋章です。高潔さの象徴であるユニコーン、そして頭部の角は歴代ハイペリオン王の兜にも付けられていました」

 ヴァイスザッハの説明を聞きながら、レニはハイペリオンに近付く。

「ヴリル・ジェネレーターが1基増えている。全部で3基ね」

「1基あたりの出力も上がっています。今なら性能をフルに引き出せる状態です」

 レオもハイペリオンの周囲を回りながら、完成したメックを見上げている。

「だが、これで3騎を相手にするのは難しいかもな。ブロデアだって新型機だからな」レオはレニを見る。「でも、心配するな。俺をヴァイスザッハ卿でなんとかする」

 彼の言葉と表情には、自信に満ちていた。この2人は信用できる。


 具体的な内容はないが、それでもレニも信じてみようと思えた。

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