第40話 【幕間】あるメック開発者の手記
私はメック開発に携わってきたが、今日ほど恐ろしいと思ったことはない。
我々の開発チームは、ローゼンハイム卿の指示の元、新型メックを開発した。それはメックの概念を変えてしまうような素晴らしい性能のメックであったが、同時にその戦闘力は凄まじいものである。私には、それが悪魔の発明にも思えたくらいである。
最初に開発したのはケーニギンである。戦場でも目立つように真紅の装甲にした。真紅のメックを見ただけで相手の士気を削いでしまうように、あえて目立つ機体色にしてある。
乗るデュナミスはカミラ・ローゼンハイム卿ということもあり、機体のデザインにも工夫した。バストラは重装甲の騎士をモチーフにしているのに対し、ケーニギンは女性的なデザインを強調している。その独特のデザインは遠くからでも確認でき、女王としての風格を出せるようになっているのである。
もちろん、機能面もバストラより遙かに高性能である。防御力は低いものの、斬撃を避けるだけの機動力を持っていた。関節部分にも改良は加えられ、より人間らしい自由な駆動を可能にしたのである。
そして、カミラ・ローゼンハイム卿のデータで調整したことで、ケーニギンは侯爵専用機となった。ローゼンハイム卿は、ブロデアでも最強のデュナミスと言われ、同時に最強のメック乗りとも言われている。最強と最強が合わされば、それは究極兵器と言ってもいい性能を有する。
完成後、動いているところを見たが、正直なところ「素晴らしい」と感動してしまう一方で「とんでもないものを誕生させてしまった」と感じていた。ブロデアの主力メックであるバストラを圧倒したのだ。
武器や兵器は、どんなに綺麗事を並べ立てたとしても、人殺しの道具でしかない。いかにデザインが良くても、重要なのは「いかに多くの人間を殺せるか」という点に尽きる。
そんな恐ろしいメックを、自分たちの手で造り上げ、世に解き放ってしまったのである。悪魔の発明で、悪魔の獣を生み出してしまった。
ケーニギンの開発と同時に4騎のメックを平行して生産していた。誰が乗るのか分からなかったものの、ケーニギンと同等の性能を持ったメックである。ただし、誰が乗るにしても、ローゼンハイム卿を越えるデュナミスはブロデアにはいないため、ケーニギン以上の性能にはならないだろう。とはいえ、恐ろしい兵器であることには変わりはない。
私はどこかで、我が国の新型メックが倒されるのを望んでいるかも知れない。凶暴なドラゴンを倒すのは全知全能の神ではなく、いつだって勇敢な人間なのである。




