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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第5章 拡大する戦火
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第39話 リアの想い

 ベルグは訓練が進むにつれて、自分には特別な能力のない人間である、と思い知らされることとなった。

 レヒトとリンクはまだ少年であるにも関わらず、戦闘のセンスはベルグを遙かに越えていた。何度戦ったとしても、勝てないのである。子供は大人と力比べをしても勝てないが、このときばかりはその常識は通用せず、ベルグと少年たちの間には圧倒的な戦闘能力の差があった。

 2人の方がメックをうまく扱え、まさにメックと一心同体になったように乗りこなすのである。


 そして、カミラはレヒトやリンク以上に強かった。ベルグより強い少年たちでさえ、足下にも及ばないのである。当然、ベルグが相手になるはずもない。例えて言うなら、赤子と大人である。

 訓練の中、カミラのメック・ケーニギンに斬りかかった時である。

 渾身の力を込めてブレードを振り下ろしたが、刃はケーニギンに触れることはなかった。不意打ち気味の一撃でさえ、あっさりと避けられる。

 ブレードだけではない。拳も蹴りでさえも、当たることはなかった。まるで、全ての動きを予知しているとしか思えないような、異様な動きであった。


 唯一の救いといえば、、3人とも味方であるということだろう。訓練であるから、倒されはするものの、命までは奪われることはない。敵対すれば身が震え上がるほど恐ろしいが、味方にいればこれほど心強いことはない。

 白いメックの強さは、ベルグは誰よりもよく知っている。だが、カミラの強さには到底敵わない。白いメックがカミラと戦った場合、何分持ちこたえられるだろう。いや、60秒以内に決着が付いたっておかしくない。


 自らの戦闘能力の低さを嫌というほど思い知らされる一方で、驚いたこともある。

 それはリアのことであった。

 イルマ・ハイゼの訓練相手をしていたそうで、メックの戦闘経験もその時に培ったという。

 彼女の戦い方は、カミラにもイルマにも似ていなかった。とにかく前へ出て、攻めてくるのである。最初はそういう戦い方なのか、とも思っていたのだが、それにしては前に出過ぎている感もあった。

 まるで、防御を捨てているようでもある。


 ある時、ベルグはリアに戦い方を訪ねた。

「イルマ様に戦い方を教えてもらいました」と、リアは言った。

「確かに、イルマ卿は攻撃に重きを置いた戦い方をする……しかし、君の戦い方は……」

「死に急いでいるようですか?」

 リアは不敵な笑みを浮かべる。

「そうだ。君の戦い方は死を恐れないどころか、死に急いでいる者の戦い方だ」

「ベルグ卿の言う通りです。私は死を恐れていません」

 彼女は淡々と言う。

「どうしてそこまで……」

「イルマ様のためです」リアは静かにそう言う。

「復讐か……?」

「そうです。私は復讐のためにメックに乗っています。イルマ様の仇を討たなくてはならないんです」

「仇討ちを責めるつもりはない。むしろそれはリアの忠誠心の高さを表しているのだからな。だが、死んでしまっては意味が……」

「命など惜しくはありません。白いメックは私が刺し違えたとしても倒します」

 何という覚悟なのだろう。これは忠誠心なのか。いや、執念なのかもしれない。それとも、もっとどす黒い感情なのだろうか。

「気分を害したのであれば、謝ります。しかし、戦い方を変えるつもりはありません。今度の出撃が、私の最初で最後の出撃です」

 リアは一礼し、ベルグの前から立ち去った。


 ——私には、あんな覚悟はできるだろうか。


 ベルグは不意にそう思った。

 命を捨てる出撃など、考えたこともない。戦果を上げて、生きて帰還する。それこそがデュナミスの戦い方であるとベルグは教わってきた。

 だが、リアは違う。恐るべき気迫で戦闘に臨もうとしている。その気迫に、ベルグは今まさにたじろいでしまった。戦闘経験は彼の方が上回っているはずにも関わらず、である。


 ——私には何ができる。


 自室に戻った後も、設計書を眺めながら自問自答を繰り返していた。

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