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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第4章 王家の末裔
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第29話 レニの戦い

 ハイペリオンは鋼鉄の足音を立てて走る。

 左腕とエネルギー残量以外は問題がなく、動きは軽やかである。

 相手の性能は分からないが、スピードを活かして一撃で戦闘不能、もしくは追撃できないようにしてしまえばいい。


 ——大丈夫、私ならできる。


 陽は落ちて、周囲は暗くなっている。ハイペリオンの目を通してみる闇の中は、まるで昼間のように明るくはっきりと見える。

 ハイペリオンが歩みを止めた。障害物のない開けた場所だ。ここならハイペリオンのスピードを充分に発揮することができる。各種センサーを駆使して周囲を捜索してみたが、先行して地雷などを設置している反応をなかった。

 耳を澄ますと、ハイペリオンとは違うヴリル・ジェネレーターの音が遠くから聞こえてくる。一定の間隔で聞こえてくる鋼鉄の足音は、メック以外にはない。


 正面にバストラを捉えた。相手もハイペリオンの姿を補足したのか、まっすぐ向かってくる。

 本来なら、ハイペリオンが一気に距離を詰めて、相手が怯んでいる隙に倒してしまうのが理想なのだが、エネルギーの消費が激しいため、今はできない。

 あまり動かず、バストラが仕掛けてきたところに合わせて攻撃をするしかないのだ。余計な動きをすれば相手に警戒されてしまうから、極力動かないようにしなくてはならない。


 互いの距離が50メートルほどまで詰まった時、バストラは立ち止まった。

『そこのメック、あんたに聞きたいことがある!』

 茨が巻き付いた髑髏のマークを付けたメックから女の声がした。

『この機体、見覚えあるだろ?』

「ええ……」

『へえ、デュナミスは女かい……じゃあ私は来た理由は分かってるね』

 バストラはスラヴァーを起動させる。

 レニもスラヴァーに光を纏わせる。

『ブロデア帝国のイルマ・ハイゼ。爵位は子爵、メックはバストラだ!』

 戦いの前に名乗るのは、伝統的なデュナミスの決闘と同じである。もし決闘を受けるのであればレニも名乗らなくてはならず、拒否するなら逃げ帰らなくてはならない。

「レニ……爵位はない……メックはハイペリオン」

 ハイペリオン王家であることは名乗れなかった。まだ自信がない。

『名乗り返したね……』

 バストラが腰を落とす。

『ハイペリオンとは大層な名前つけているじゃあないか!』

 大地を蹴って、褐色の騎士が走り出す。

 レニのイメージ通りの展開である。戦いが始まったものの、彼女の気持ちは驚くほど落ち着いていた。

 両者の距離が30メートルまで近付く。バストラは突撃してくる。ハイペリオンが構えたまま動かない。

 レニは今のうちに呼吸を整える。


 そして20メートルを切った時だった。バストラが剣を振り上げた。互いが一歩踏み出せば剣が届く距離までもう少しである。剣を振り上げるタイミングがやや早いようにも思えたが、レニは相手の動きに本能的に反応して剣を突き出そうとした。

「……ッ!」

 その時、バストラの腰部が光った。同時に光弾が尾を引いて飛び出す。それが何であるかを理解するより早く、ハイペリオンの足下に着弾する。光弾にメックの脚部を破損させるほどの威力はなかったが、足下の土を大きく抉り取っていた。

『戦いなんて勝てばいいのさッ!』

 ハイペリオンがバランスを崩して手前に倒れ込み、膝を突いてしまう。

 相手はこれを狙っていたのだ。ハイペリオンが倒れ込んだことを計算して、早めに剣を振り上げたのもそのためだ。

『勝負あったねッ!』

 バストラが剣を振り下ろしてくる。

 レニはとっさにシールドを持ち上げる。損傷している左腕だったが、選択肢を考えるより前に体が動いた。

 シールドにスラヴァーが激突する。直撃であった。斬撃を受け流している余裕はない。衝撃はシールドを通してすべて伝わってくる。ふんばりが利かず、後方へ吹き飛ばされる。

 瞬間、レニの左の腕に激痛が走る。目の前に複数のアラートが表示される。左の肩の関節が破損した。動かすこともできず、シールドという重りをぶら下げただけの物体となってしまった。

 尻餅をついた形となったハイペリオンは、剣を前に突き出して次のバストラの動きに対応しようとする。

『心配しなくていいよ……ちゃんとダイバールーム狙って殺してあげるからさぁ!』

 勝利を確信したバストラが斬りかかる。

 ハイペリオンの体勢が悪い。とても攻められる状態ではない。


 その時、ハイペリオンの頭上を激しい光が通過した。

『ああッ……!』

 イルマの苦しげな声がするとともに、バストラの右腕が火花を放ちながら地面に落ちる。

 光が飛んできた方を振り向くと、青い装甲のメックがいた。そのメックがスラヴァーを投げたのだ、と瞬時に理解できた。


 ——あれはレオだ。


 根拠はないが、レニは直感的にそう思った。

 ならば、これは好機だ。

 レニはスラヴァーを突き出す。

 バストラは痛みに耐えながら、シールドで守ろうとするが、ハイペリオンの方が動きが速い。


 スラヴァーは正確にバストラの頭部を貫いた。

 頭部を破壊されたバストラは力を失い、貫かれた衝撃もあって後方へと倒れ込む。

 だが、その時にバストラの胸部装甲が開くのをレニは見逃さなかった。タイミングから考えて、頭部が破壊される前にダイブアウトしているはずである。

「ダイブアウト!」

 レニもメックを降りて、機体の外へと飛び出した。しかし、飛び出して何をするかは考えていなかった。

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