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ハイペリオン戦記  作者: 松本 ゆうき
第1章 非武装地帯への侵攻
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第2話 デュナミスとダイバーメック

 ブロデア帝国とレディスト王国の国境地帯は、歴史的に幾度となく両国間の領土争いに巻き込まれていた。先の大戦の結果、敗戦国となったブロデア帝国側の土地は非武装地帯に定められていた。


 非武装地帯においてはあらゆる軍事施設の建設は禁止され、いかなる兵力の配備・進入も許されていないはずのその地帯に、一騎のメックがあった。

 それは、褐色の鎧に身を包んだ騎士のようであった。全長10メートルの騎士は片膝をつき、頭を垂れて整備を受けている。

 バストラ。それがこのメックの名前であり、第二世代のメックに分類されている。


 先の大戦で初めて実戦に投入されたメックは、それまで人間が扱ってきた兵器では歯が立たないほど圧倒的な戦闘力を持っていた。しかし、当初は動かすために複数の兵員が必要で、扱いにくいのが難点であり、他国にもメックが現れたことで、対メック戦に対応しなければならなくなった。

 そして、現れたのが第二世代メックである。デュナミスと呼ばれる能力者の力を使ったことで、一人でメックを動かせるようになり、対メックにも対応できるようになる。同時に装甲が厚くなり、バストラのような甲冑型の装甲を纏うようになった。


「皮肉なものだな」

 整備されているバストラを離れた場所から眺めている男が、独り言を呟く。彼の名はアルベルト・ベルグ。ブロデア帝国の能力者用の軍服を着ている。

 特殊な能力を持つ者たちは、それだけで重宝されていた。高い能力者を輩出する家には爵位を与えられ、かつては戦場を駆け抜けて戦果をあげていたが、銃器の発達とともに活躍の機会を奪われ、彼らの持っていた爵位は飾り物と化した。

「今では我らが戦闘の中心になっているとは……」

 メックの登場で、デュナミスたちは再び戦場に呼び戻された。かつてデュナミスを不要の存在として始末しようとさえした者たちに呼び戻され、戦場を駆けているのだ。

 それでも戦わねばならなかった。先の大戦で、ベルグの祖国であるブロデア帝国は大打撃を受けた。百年先まで払わなければならないほどの多額の賠償金を課され、ブロデアの経済は崩壊し、国民は毎日食べるパンを確保するにも苦労している。


「ベルグ卿」

 兵士がベルグの元へとやってくると、敬礼し「バストラの整備が終わりました」と、告げる。

 部隊の最年長で四十代前半といったところだろうか。本来であれば、三十歳にも満たないベルグに命令を下す立場のはずである。デュナミスであるかどうか、二人の立場を分けるのは、ただその一点だけである。しかし、それは努力などでは埋めようがない決定的な差であった。


 ベルグは歩き出し、バストラへと近付く。ブロデア帝国がようやく開発・量産することができるようになったメックである。崩壊寸前とまで言われた祖国の復興を体現している機体でもあり、ベルグはバストラに搭乗することを誇りに思っている。

 バストラの胸部装甲が稼働する。ベルグは軽く大地を蹴ると、四メートルほどの高さにあるバストラの胸部へと入っていく。メックの胸部は人がようやく収まることができる程度のスペースしかない。


「……ダイブ」


 ベルグがそう呟くと、彼の意識は溶けていく。視界がぼやけ、体の感覚も失われていく。そして、徐々に感覚が戻っていく。目の前に光が飛び込んでくると地面が見え、こちらを見上げている兵士の姿もあった。

 意識を同化させることで、メックを一人でも動かせるようになった。デュナミスのダイブ能力を使うため、第二世代のメックは「ダイバーメック」とも呼ばれている。


 バストラと同化したベルグが立ち上がる。金属製の関節がけたたましい音を上げ、特殊超合金製の甲冑が一斉に鳴り出す。

「ダイバーメック・バストラ……出るぞ」

 バストラはレディスト王国の方角へと向き直る。

 作戦目標は、国境近くで密かに生産されているという新型メックの破壊であった。

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