第16話 【幕間】メックの進化
[エヴァリスト・ルクレール 『戦争がもたらしたもの』より抜粋]
人類初の世界大戦は、様々な新しい技術の発達により、戦場に多くの革新をもたらした。
機関銃、毒ガス、航空機、戦車、そしてメックである。
1916年、初めてメックが戦場に登場したとき、人々はあまりの衝撃に戦いが僅かな間だが止んだと記録されている。
ようやく戦車が実戦投入されたその時代に、突如全長15メートルの人型兵器が登場したのだ。巨人が戦場を蹂躙する様子を見たその衝撃は計り知れないだろう。
この当時、「ヴリル」と呼ばれるエネルギーが発見された。ヴリルを利用したヴリル・ジェネレーターは、ガソリンエンジンよりも遙かに高出力を実現したため、15メートルという巨体を動かすことができるようになった。
ただし、ヴリル・エネルギーはコストがかかるため、それが唯一の欠点と言える。ヴリル・エネルギーは軍事にのみ用いられ、一般では使われていないのはそのためである。
各国でメックが生産されるようになり、1917年には史上初のメック戦が行われた。
しかし、当時のメックは運用に4人必要で動きも遅く、武装も対人対物用の機関銃を装着していたため、メック戦ではお互いの武器が通用せず、子供の喧嘩のように腕を振り回して殴り合うだけだった。
もしメック戦がこのままだったら、あまりの馬鹿馬鹿しさに戦争は無くなっていたかもしれない。
次の革命が起こったのは1917年末のことである。
「サイコダイブ」を利用したシステムにより、デュナミス1人で操縦ができるようになった。
また、10メートルまで小型化することでスピードを獲得し、格闘戦で無類の強さを発揮した。
さらに対メック兵器「スラヴァー」の誕生によって、メック戦はさらに激しさを増していく。
この時代のメックは、近年では「ダイバーメック」と呼び、それまでのメックとは区別される。
スラヴァーの威力に対抗するため、メックの装甲は厚くなっていった。スラヴァーを受け止めるための大型のシールドと、斬撃に耐えられるような装甲を手に入れた。特殊超合金の装甲は、2度や3度の斬撃を防ぐことができる。
それはまるで甲冑を着込んだ中世の騎士のようであり、各国でデザインも多様化していく。銃火器が発達したこの時代に、戦い方はむしろ古き良き伝統に固執しているかのようであった。
大戦が終結した後、メックの進化は落ち着いているように見える。
しかし、それまでの歴史が証明しているように、人類は戦争によって急激な発展を遂げてきた。缶詰や腕時計も戦場から生まれたのだ。メックの進化もきっとこのままではなく、いずれ大きな変革が訪れると考えても、まったく不思議ではない。
だが、それがどんな進化なのかは、私には分からない。どんな進化だってあり得るかも知れない。そして、その進化は人類にとってどんな幸福、または不幸をもたらすのかさえも予想できない。




