第3話 青い鳥
川沿いを上る。
結構進んできたと思うけど湖はまだ見えない。
ちょっと走ってみようかな。
ジョギング……。
ジョギング……。
おかしい。
全然疲れない。
以前の俺ならとっくに息が上がって、脇腹が痛くなって、足もガクガクしている距離を走っているはず。
なのに全然疲れてない。
ダッシュしてみる。
木にぶつかった。そしてその木が折れた。
俺に痛みはない。
……。
隣にもう1本、木があるので思いっきり蹴ってみる事にした。
そこそこ大きな木だ。
殴るのは拳を痛めるのが怖いので、蹴りで。
半身になり右足の裏で押し蹴る。
イメージよりも不格好な蹴りだったけど大木が折れて吹っ飛んだ。
その後ろの木々も衝撃波で何本か吹っ飛んだ。
……チート化だ!
思わず両拳を掲げた。
これはますます慎重に生きないと。
せっかくのチート転移なんだから!
このパワーが普通の世界だったらビックリだけどね!
一応剥げてないか頭を撫でてみる。
うん。髪ある。
今度は徐々にスピードを上げながら走る。
ギリギリのスピードに目が慣れたらまた速度を上げ……の繰り返しで、目が追い付かない限界を探りつつ走る。
途中高速で走るのが厳しい場所は速度を落とし、開けたら上げる。
なかなか遠くまで開けてる場所はなかったけど。
でもなんとか分かった。
足よりも目のほうが限界になる。
まだ速度を上げられる状態だけど、そこから上げると目を瞑って走ってるのと同じ状態になる。
まぁそんなスピードで走る事なんてないと思うけど。
湖に出た。
かなり走ったと思う。
全然疲れてないけど。
「海?」
対岸が見えない。
もっと小さい湖をイメージしていたけど、これじゃ側にあると言っても見つけられる気がしない……。
とりあえず湖を左回りに歩いてみる。
建物らしきものは見えない。
見えるのは森。山。のみ。
ちなみに湖に着くまでに魔獣らしきものを何度か見かけたが全部走って振り切ってきた。
決して逃げてきたわけじゃない。……決して。
わざわざ止まってやる義理なんてないのだから。
俺、箒しか持ってないし。
青い鳥がいた。
胸はオレンジ色。カワセミみたいな綺麗な鳥だ。……っていうかカワセミでは?
……会話できるだろうか。
出来たら空から見て案内して欲しい。
「鳥さん鳥さん」
青い鳥は逃げなかった。驚いてこちらを見ている。
優しい声を意識して続ける。
「とても綺麗な君にお願いがあるんだけど」
「……お願い?」
通じた!会話できる!!
「ちょっと上に飛んで、この辺に人の家がないか見てくれないかな?」
青い鳥は考えてくれているようだ。
そして。
「な、なんで……っ!?」
否定の言葉っぽいのが聞こえてきたら、思い切って捕まえてみようと準備していた。
自分のスピードは理解していたので自信はあった。
「オネガイオネガイオネガイオネガイオネガイ」
「イタイイタイタイタイタイ。掴まないで。見るから。探すから」
交渉成立。
かなり強引だったけど。
ごめんよ。
青い鳥は飛んでくれた。
俺が握っている石を見て複雑な顔をしていたが……。
青い鳥は周囲を旋回しながら見回した後、降りてきた。
途中チラッとこちらを見た気がしたが……逃げようとでも考えたのだろうか。
何はともあれ戻ってきてくれて良かった。
「どうだった?」
「あっちの、北西のほうに何かあるのが見えた」
北西! そんな言葉知ってるんだ!
まぁ、それは置いといて。考えてもどうせわからないだろうから。
向こうが北西ということはあっちが北ね。
方位磁石が欲しいな。
当然無いので、引き続きこの青い鳥に案内して頂こう。
「悪いけどもうちょっと付き合ってよ。その場所まで案内お願い」
青い鳥は嫌そうだったが、俺が持ってる石を見てしぶしぶ案内してくれた。
人の家を目指して森を進む。
青い鳥が震えながら怖いと言うので、上着の胸ポケットに入ってもらって走りながら進んだ。
たまに上に飛んでもらって位置確認。
無事、人の家に着いた。
が、家は見えない。
高い壁が続いて、立派な門があった。
門からも家は見えない。




