第1話 即飛ばされました
序章が4部あります。未読の方はぜひ。
魔獣ガレアはなんでも喰べた。
植物。動物。魔物。魔獣。魔族。人族。
それでも飢えは満たされずお腹が膨れていくばかり。
ちなみに魔獣ガレアにお尻の穴はない。
胃で全て消化、吸収してしまうからだ。
なのでいつの間にか四足歩行が二足歩行になっていた。
それでも魔法や伸ばした前足で獲物を仕留めて喰った。
ついには物も喰べるように……。
そして一の国を壊滅させ、その王城跡から光る物を見つけて喰ったとき魔獣ガレアの体内で変化が起き始めた。
でっぷりと膨らんでいたお腹も元通りになった。
だが、魔獣ガレアの飢えが解消されたわけではなかった。
魔獣ガレアはさらに北上する。
なぜ北だったのか。
意味はない。
そちらが前だっただけ。
また、一つ国を壊滅させ、更に北上。
森に入り暫く進んだ時、魔獣ガレアの目の前に突然人間が現れた。
箒を持った人間が。
魔獣ガレアはもう殺すのも面倒になっていたので咆哮で威圧し、動けなくして喰った。
丸のみで。
殺さずに喰ったのはこれが初めてだった。
ネフトタリス王国の宮廷魔導士筆頭補佐である『マノン』は絶望していた。
召喚されたのが人であった時は勇者様だ!と歓喜したが、その何故か箒を持った勇者様が魔獣ガレアに即喰われてしまったからだ。
「ま、マノンさま……ど……」
どうすれば、どうなってしまうのか……あたりであろうかマノンの部下である彼女が言いたかったのは。
マノンの後ろで彼女も両膝を付いて絶望していた。
「まだ……やるべきことはある」
後ろで震えている部下を見てマノンは冷静さを取り戻し、もう一つの命令を思い出した。
『召喚が失敗した場合は魔獣ガレアをこの地から吹き飛ばす事』
倒すことは出来なくてもそれくらいは出来るかもしれない、そう思われての命令だった。
災厄を他の地に押し付けることになるのは申し訳ないが自分たちにはもうどうしようもない。この世界は広い、もしかしたらまだ知らぬ勇者がいるかもしれなし、もしかしたら竜族が動いてくれるかもしれない。西の海を挟んだ先には竜の大陸がある、そこまで飛ばせれば……。飛ばせられなくても海の手前、この大陸の西の果ての地は大賢者が支配する不可侵の地……あそこならあるいは。と。
「とにかく出来るだけ西にぶっと飛ばせ!」と。
マノンは国随一の風魔法の使い手でもあった。
「召喚された勇者はガレアに捕食されました! 第2案を実行します!」
マノンは分身体に、上官に向けてそう発言させたあと分身体を消した。
魔獣ガレアを吹き飛ばす魔法の為に。
マノンは魔力を練る。
自身のすべての魔力を。
相手を殺傷させる能力は全て排除し、ただただ吹き飛ばす事だけに特化した魔法を練り上げる。
(ぶっ飛べ!ガレア!!)
両腕を伸ばし、交錯させた手のひらから球体に渦巻く風魔法が放たれた。
なんか持ってるな……俺。
なに持ってるんだろ?
右手を見たが、見えない。
相変わらず真っ暗だから……胃の中だからね。
たぶんだけど。
なぜか消化されてないし。
ただ段々と体が勝手な動きをしなくなってきた。
だからこそ右手に何かを持っているような感覚を感じられたんだけど……。
右手……左手……右足……左足……ある。
首も頭も。
触ってみた感じも人の形は保てているんじゃないだろうか……。
アレも股の間にちゃんとあるし……良かった。
体が勝手な動きをしなくなった。
完全に俺の支配下に戻った感じ。
後は……出たい!
やって……みるかな。
何かが体の中に充満している感じもあるし。
体を丸く縮めて……体内の何かを周囲に発散するように、ジャンプしながら両手両足を広げた。
爆発音が響いた……のかは分からないが、俺は魔獣を中から魔獣を爆発さたような感じで外に出た。
空に浮いていたので「良い景色」と呟いたら、突風が俺を吹っ飛ばした!
なんなんだ!!




