第6話 誑し
「ん~、ちょっと足りないかも」
採ってきた石と岩を眺め、リンが呟く。
「とりあえずだから。一か所で採りまくっても良くないし、あとは作業しつつで良いんじゃない?」
「また行ってくれるの?」
「もちろん。フィリアレットさんが行ってくれるよ」
「は?」
「フィリアレットさんは森の中で呼べばすぐ来てくれるし、川にも一瞬で行けるし、アイテムボックスだってもちろん使えるから……ね!」
フィリアレットさんを見る。
リンも憧れと尊敬の眼差しに期待を混ぜ見つめる。
「ちょっ……」
フィリアレットさんは俺とリンを交互に見る。
「ま、まかせなさい」
「ありがとうございます」
リンは深々と頭を下げた。
なんとなくフィリアレットさんが断れないものが見えてきた気がする。
「じゃ、小川の事で困ったことが出来たらフィリアレットさんに相談するように」
俺はそそくさとラナさんの元へ……と思ったら。
「待ちなさい」
「ぐえ」
フィリアレットさんに後ろ襟を掴まれて止められた。
「な、なにか?」
「私に対しての接し方雑過ぎない?」
「そんな事ないですよ。きちんと親愛の情を込めて接していますよ」
「親愛って。その感じが嘘くさい」
「じゃあ、敬って接してみます? つまらなくなると思いますよ」
「……やってみて」
俺は膝まづく。
「え?」
「ようこそお越しくださいましたフィリアレット様」
「いや。そこまでしなくても」
「とんでもございません。偉大なるフィリアレット様と同じ目線に立つなど恐れ大い事でございます」
(さっさと用件言って帰れよ)
「え?」
「仮の心の声です」
「ええ? なんでいきなりそうなるの?」
「何かを我慢して接しなければいけない相手に対しての本心なんてそんなものですよ」
「そうかな~?」
「……」
「……」
「……」
「な、なにか言ってよ」
「わたくしごときが偉大なるフィリアレット様に話しかけるなど許されません」
(だからさっさと用件言って帰れっての。こっちも忙しいんだよ。まったく)
「やめ! 終わり終わり」
「ほらね」
「極端過ぎるのよ。間はないの? 間は」
「ないですね。あったとしても、態度を強要しているという意味では一緒なので、さっきの接し方と本質は同じですよ」
まだ納得はしてくれてない様子。
「それに素で接する事が許されないのであれば、もう一緒に遊べなくなりますよ」
「え? 遊んでたの?」
「遊びじゃなかったら逆に何やってたんですか?」
「……な、なにやってたんでしょう?」
知らんがな。
「……暇潰し?」
「楽しかったですか?」
「……」
「俺は楽しかったですよ。蛇を倒したり、訳の分からない言い合いをしたり。楽しい思い出です」
「まぁ、楽しかったかな」
「じゃあ、良いじゃないですか」
「でも私にも立場というものがあるし……」
「それは……誰かに命令されているんですか?」
少し心配になった。
「そういう訳じゃないけど……」
「良かった。だったらフィリアレットさん次第じゃないですか。立場を優先して孤独に過ごすか、立場の壁を壊してみんなと楽しく過ごすか」
「私別に孤独じゃないけど?」
「……本当にそう言い切れますか?」
「も、もちろんよ……」
そう言いながらもフィリアレットさんは黙り込む。
……。
……。
パンッ!!
「何!? 急に手なんか叩いて」
「今フィリアレットさんの中で何かが弾けました。何が弾けたでしょう?」
本当はただ間が持たなかっただけ。
それにちょっとこのやり取りに飽きてきた。
「何が弾けたの?」
「さぁ? フィリアレットさんの中の事なので俺には分かりませんよ」
「……弾けたというよりあなたが手を叩いだだけでしょ」
「本当に? 叩いた瞬間を見たんですか?」
「瞬間は見てないけど手は合わせてたじゃない」
「叩いたんじゃなくお願い事をしていただけかもしれませんよ」
「何を?」
「……フィリアレットさんと友達でいられますようにって」
「!」
「その願いが通じてフィリアレットさんの中の何かが弾けたんじゃないですか?」
「……」
「……叶いましたかね? その願い」
「さあ……」
フィリアレットさんは森の方へ歩き出す。
そして振り返り、
「明日の昼食楽しみにしているわ」
そう言いながら笑顔を向けてくれた。
「はい」
フィリアレットさんはリンを連れ再び森に歩き出す。
「よし。明日の昼飯は俺が作るか~」
「って! ラナに言っておいて!」
聞こえちゃったみたい。
「あ。はい」
ちぇ。
……内緒で作ってビックリさせようかな。
ラナさんにデザートの作り方教えてもらおっと。




