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第8話 結局ジト目される国王(仮)

 翌朝。

 今日は大事な会議があるのでラナさんとベルも一緒に学術院に行く。

「おはようございます」

「おはようございますッス」

 トーマ君。なぜわざわざ『ッス』をつけるのかね?

 しかも何故かめちゃくちゃ緊張してるし。

「このガキ誰?」

 ベル。君も相変わらずだね。

「会ったことはなかったのか。こいつがアリーシアさんの息子のトーマだよ」

「ああ~」

「この子が」

 ラナさんも顔は知らなかったようだ。

「よ、よろひゅふゅお願いひまひゅ……ッス!」

「噛み噛みじゃん」

 俺とベルは思わず爆笑してしまった。

「あた、当たり前ッスよ。伝説のお二人を前にして緊張しないほうがおかしいんッスから!」

 伝説って。

「ふむ。苦しゅうない。楽にせよ」

「ベル。からかわない。トーマ君、よろしくね。ユイ様からも仲良くするように言われているから普通に接してね」

「は、はひ」

 トーマは名前を呼んで貰えたことで緊張と高揚がピークに達したようだ。

「トーマ。顔真っ赤だぞ」

「面白い奴」

 俺とベルの笑いは止まらなかった。

「ちょー」

 

 という朝の和やかな笑いから一転。今はみんな真剣モード。

 それも当然、大事な防衛会議が始まるのだから。

 参加するのはアリーシアさんを筆頭とした学術院の主要責任者の方々、リアーネさん、各街の首長さん、リアーネさんと各首長さんの側近二人は先日の大会議の時と同じようにそれぞれ仕えている人の後ろに用意された椅子に控えている。そしてラナさんも今回は顧問という立場でテーブルに着く。

 てっきりベルもラナさんと同じようにテーブルに着くのかと思っていたけど、俺のメイドとして俺の後ろに立って控えている。

 意外とメイドとしてのプライドを持っていたりするのかもしれない。

 振り返り、恭しく立っているベルを見る。

「なに?」

「別に」

 

 会議は隣国の情勢報告から始まった。


 この国の隣国は5つ。

 北の大火山も領土に含まれるので、大火山の北東に『バゼルバージュ王国』、そこから南へ順に『エリュフュリア王国』、大陸の中央を横断する森を挟んで『マリーハット王国』、『ムジムナット王国』とあり、更にその南に『ガレアの森』を挟んで帝国の属国となった『ポルチェット王国』がある。ちなみにガレアの森は無主地なので、正確にはポルチェット王国とは陸続きでの隣国ではなく、湾の東南端がポルチェット王国の領土で、湾を挟んでの隣国となっている。

 そしてガレアにより壊滅状態になっているのはマリーハット王国とムジムナット王国で、ガレアはムジムナット王国とポルチェット王国の間にあるガレアの森から北上して行った。

「では、それぞれの国の現状を伺いましょうか」

 アリーシアさんがリアーネさんの部下に報告を促す。

 各国の情報はリアーネさんの諜報部隊が集めた情報を元にリアーネさんの側近のトーリム族の人が説明してくれる。

 彼の名前は『タジュ』と言い。トーリム族なので見た目は少年。にもかかわらず堂々とした佇まいで理路整然と話すので、その様子はあの小さな名探偵を思い起こさせる。蝶ネクタイはしていないけどね。

 ちなみにリアーネさんのトーリム族とその盟友のジャフール族はこの国の傘下に入る事を決断したそうで、リアーネさんは警備部と諜報部を組織に置く治安機関のトップとなる予定だ。

 そして諜報部のトップには千代が就く予定でトーリム族の諜報部隊は千代の指揮下に入ることになる。いずれはもっと細分化された組織図になるだろうけど、今はそこまで出来るほどの人員は確保できないので兼務の多い大雑把な組織図となっている。


「では、まずは北東のバゼルバージュ王国の情勢からご報告致します。かの国の現状は安定しております。敵国や魔獣、食糧難と言った国家危機の心配はなく領土拡大の野心も現在は見受けられません」

 領土という言葉で気になることが浮かんだ。

「ウチとの国境線はどうなってるの? 他国もだけど、そのあたりで揉めない?」

 アリーシアさんが説明してくれるようだ。

「各国との境界線は山脈の稜線となっておりますが、火山の麓の場合は、火山の周囲に張られた結界から1キロ離れた位置が境界となっております」

「火山に結界張ってあるの?」

「はい。噴火による被害を防止するために張られています。そしてそれがシャシャート様に火山の所有権を認めた理由にもなっておりまして、現在は結界の管理を学術院が行い、境界線はバゼルバージュ王国、エリュフュレス王国の両国が監視しております」

 ちなみに大火山は4つの大陸にそれぞれ1つずつあり、同じように結界が張られているそうだ。

 ふと、思いつく。

「その結界ってさ、外側からの防壁にもなるの?」

「なります」

 ラナさんが答えてくれた。

「じゃあさ、国境線にその結界を張ることは?」

 それができれば防衛問題はほぼ解決されると思うけど。

「できません」

 ダメか。

「あの結界は世界の崩壊を防ぐためにシャシャート様や当時の力の頂点であった方々が結集し、協力することによって実現できた奇跡のような結界ですので、再現は不可能です」

「能力を落としたものだったら?」

「規模が大きすぎるので通常の結界でも不可能かと」

 諦めよう。

「そっか。ただ火山の結界は利用できるわけだ……じゃあ、バゼルバージュ王国はその結界を破らないと侵攻できない訳だから、過度に警戒する必要はないってことかな?」

「はい。そのご推察通りかと」

 みんなも同意見のようで、関心はエリュフュレス王国へと移る。

「エリュフュレス王国はどういう状況?」

 再びアリーシアさんがタジュに振る。

「エリュフュレス王国もバゼルバージュ王国同様に安定しております。尚且つ、東の湖を挟んだ隣国のネフトタリス王国がクリスタルを失いましたので、これまでのような横柄な外交をされなくなると王都は祝賀状態になっているようです。名目はあくまでもガレアの消滅祝いとなっておりますが」

 なんか楽しそうな国っぽい。

「エリュフュレス王国ってどんな国なの?」

 アリーシアさんに尋ねる。

「そうですね……芸術と美を愛するとても美しい国です。王位には代々女王が就き、白い王城は湖の畔で壮麗にそびえ立っております」

 おとぎ話みたいな感じの国?

 ただ。

「その美ってさ、贅を凝らした?」

 国民に重税を課して贅を貪っている国だとしたら面倒な事になるかもしれない。

「いえ。金銭的価値に関係なく感動で心を満たすものが求められているようです。あと花がとても好まれていますね」

 花。大丈夫そうかな。

 ……いや。そう考えるとむしろ逆にこの街の方が不安になってくる。ある意味重税を課して街の利益を学問に注いでいる訳だから。

 今はその成果と理念を共有出来ているから皆に受け入れられてるけど、国となって人口も増えれば不満に思う人も出てくるはず。そして、その不満が積もりに積もってクーデターとか?

 ……そうなる前に税に関しても早めに整えておかないと。

「そういえば、ユイ様はこの学術院にも芸術の学部をお作りになりたいとのお考えがあるそうですが、いずれはその事にも関連してくるかもしれませんね」

 そうだ。確かに。

 ラナさんにもその話は回っていたのか。

「友好的な関係が築けたらエリュフュレス王国の人を講師として招くもいいかもしれないね」

 そうやって文化交流していけば進歩の速度ももっと加速するはず。

 友好的な人たちだったらいいな。

 贅より質から価値を見出せる人たちなら大丈夫そうだけど。

 

 残るは3ヵ国。

 建国宣言に反発の反応があるとすれば、この3ヵ国からされる可能性が高いらしい。

 まずガレアに襲われたマリーハット王国とムジムナット王国。

 南北で隣接するこのふたつの国は、元々はひとつの国だったらしく後継者問題で割れ、さらに、その両国どちらにも組みしなかった一族が南にあるガレアの森を抜け『ポルチェット王国』を興したのだそうだ。

「マリーハット王国、ムジムナット王国、そのどちらの国も幾つかの街と王都は壊滅状態ですが、王族はガレアの進行に合わせて避難していたので怪我なく無事生存しています。ただし、どちらの王族もその行動が国民の生命をないがしろにした迅速過ぎる行動だったため、国民及び貴族たちからの大反発を招いていまして、どちらの国でも内乱の気配が漂っております」

「また割れる?」

 アリーシアさんを見る。

「かもしれませんね。最近はどちらの国も王族より貴族の方が力を持ち始めていましたから」

「となると、宣言後はユイ様を取り込んで利用しようとする者たちが出てくるかもしれないわね」

「はい」

 ラナさんの予想にアリーシアさんも同感のようだ。

「貴族か。面倒くさいイメージがあるけど」

 ラナさん、そしてアリーシアさんに視線を送る。

「そのイメージ通りかと」

「私もできれば関わり合いになりたくない者が多いですね」

 やっぱり。腹の探り合いの交渉とかやりたくないんだけどな。

 ……そういえば。

「仮に友好的になれるとして、スイベルの獣人の人たちの気持ちとしてはどうなの? スイベルの人たちの気持ちをないがしろにする気はないから聞いておきたい」

 スイベルの首長であり獣人族でもある『オルトラ』さんに尋ねる。

 オルトラさんはその名にある通りトラ耳とトラの尾がある筋肉質の中年男性だ。

 正直名前を聞いた時はびっくりした。

 ただ、この世界にもトラに似た動物はいるがトラという名前ではない。『ヌジャ』という。

「我々ごとき者の気持ちまで慮って頂き感謝に堪えません」

 ごときって。そこまで卑下しなくても。

 ……それほどの歴史があったということだろうか。

「まず、我々スイベルの獣人族と致しましては、かの国に対して警戒感は以前として抱いているものの、幾度かの代替わりにより怨嗟の念はすでになく、ユイ様が友好をお望みであったとしてもその事に反感を抱く者はおりません」

「そっか。ただ、もし今後どんな相手からであっても侮蔑的な事を言われたりされたりした時は、国交とか余計な事は考えずに堂々と対応してくれていいから。俺としては仲間を侮辱されてまで付き合う気はないからさ」

「! ……ありがとう……ございます」

 オルトラさんは大粒の涙を流した。

 怨嗟の念はもうないと言っていたけど……幾度かの代替わりをし、差別のない街で生まれ育っても傷は未だに消えることなく残り続けているのだろうか。

 ベルがソッとオルトラさんにハンカチを渡す。

「仲間を侮辱する奴は敵だからそんな奴がいたらぶっ飛ばしちゃえ」

 そう、俺たちは仲間なんだ。獣人族だからと見下す奴をこの国の住人は誰も許さないだろう。

 そして、その気持ちはどれほど国民が増えても変わらないものであって欲しい。

 ただベル。いきなりぶっ飛ばすのは……まぁ、いいか。それができない世の中は正直つまらない。


「ではマリーハット王国とムジムナット王国に関しては内乱が起こることも想定して引き続き動向を注視致します。それに伴いオルトラ様からご提案があるとお聞きしていますが」

 オルトラさんはそれを聞くと我に返り、ベルから受け取ったハンカチで涙を拭うとその提案について話し出した。

「取り乱しまして申し訳ございません。私ごときが……」

「あっ! そのごときっての禁止ね」

 オルトラさんはまた泣きそうになる。意外と涙脆い人なのだろうか。

 後ろの椅子に座って控えている側近の獣人族の女性が、オルトラさんの背中をポンッと発言を促す意思を込めて軽く叩く。

「も、申し訳ございません。では改めまして。提案というのは、現在スイベルの東北、東、東南にある砦の要塞化についてでございます」

 その3つの砦は主に狩りの拠点として使っているそうなのだが、それらをマリーハット王国、ムジムナット王国、ポルチェット王国からの防衛および監視の拠点として要塞化してはどうかとの提案だった。

「私は賛成です」

 まずラナさんが賛同した。

「その3ヵ国が山脈を越えて侵攻してくる場合、現在砦があるそれぞれの場所付近を通ることになります。なのでこれらの更なる防衛機能の強化は効果的かと。あとポルチェット王国からは湾を越えての侵攻も予想されますが、その場合はソブラタとセルビスが前線になりますのでそれらの街そのものの防衛力強化も必要かと思います」

「となると北東にもひとつくらいは要塞を建てておくべきでしょうか」

 アリーシアさんがラナさんに尋ねる。

「そうね。どんなに友好的な関係を築けたとしても警戒は必要よ。突然国家元首が変わって政策が真逆になる事だってあるから」

 そうなった時に何もしてませんでしたじゃ国民に申し訳が立たない。

 アリーシアさんの意見に賛同したラナさんはそれぞれに配られている地図に視線を落とす。

「火山の結界を破ることは不可能ですがバゼルバージュ王国への目は必要です。となると、建てるとすればエリュフュレス王国が山脈を越えて侵攻してくるルート上、そしてバゼルバージュ方面も監視できるこの辺りが適切でしょう」

「森の中。フィリアレットさんは文句言ってこないかな?」

 ラナさんに尋ねる。

「言ってくると思います。ですが出来るだけ自然に配慮した建物にするといえば受け入れてくれるでしょう。ただし、この地はあくまでユイ様が支配する土地ですのであまり下手になり過ぎないようにお願い致します」

 う~ん。あの人相手に?

 正直自信ない。

「それと、信用もし過ぎないようにお願いします。彼女はユイ様の部下ではないので、気分次第で半目に回ることも考慮しておいて下さい」

 それはなんとしても避けたい。

 けど、覚悟はしておかないと。

「分かった」


 これで3つの砦の要塞化と北東に新要塞を建築、そして各街の防衛力強化が決まった。

 あとはどこを優先的に行うのかという議論になる。


「では最後のポルチェット王国およびバルディネフ帝国の情勢についてご報告してもよろしいでしょうか?」

「お願い」

 アリーシアさんが了承して報告を促した。

「まずバルディネフ帝国ですが、帝国はポルチェット王国に侵攻して以来、他国を侵略する動きは見せておりません。これは帝国の悲願であった南の大陸を制覇した事で侵略の目的と意志を失くしたとの見方が定説となっており、現在は広大になった国内の情勢安定に注力しているようです」

「だとしたらポルチェット王国はなんで侵略されたの?」

 報告してくれているダジュに流れのまま尋ねる。

「バルディネフ帝国には絶対不変の禁忌がありまして。それが人身売買と奴隷なのですが、当時のポルチェット王国はそれらが頻繁に行われており人族以外への差別意識も強い国でしたので、帝国はそれを見かねて侵攻したとされています」

 帝国って意外と悪い国じゃないのかな。

「じゃあ、ポルチェット王国の現状は?」

「帝国の属国となった事により人身売買や奴隷制度はなくなりました。ですが、差別意識は大半の地域では現在も残っており、その蔑んでいる魔族に支配されている状況なので帝国に対して不満を抱いている者は多く、反乱の火種が各地で燻っております。更に帝国から逃げ延びた者達が各地で裏組織を興していた事で人身売買も裏では行われているようです」

 ポルチェット王国ヤバくね?

 それに……。

「それは当然帝国も把握しているよね……ということは」

 ラナさんに視線を移す。

「はい。帝国はこちらに向けて動ける状況ではないですね。それにここからもユイ様を反乱に利用しようとする者たちが現れる可能性が高いです」

 そう言うと、ラナさんは再び地図に視線を落とし。

「現状。宣言後に我が国に反発できる国はないと判断して問題ないと思います。ただしマリーハット王国、ムジムナット王国、ポルチェット王国の3ヵ国は今後何が起こるか分からな状況ですので、これらへの警戒は必要かと、それを踏まえた上で防衛力を強化していくとすれば、優先順位はスイベルの東の砦から始まり東南の砦、東北の砦、そしてソブラタ、セレビス、スイベルの街、最後に北東の森の新要塞でしょうか」

「……うん。俺もそれで問題ないと思う」

 他の人たちからも異論はなかったのでまずはスイベルの東の砦から要塞化することが決まった。

 そして街については。

「街の防衛力の強化に関しては、先に街を見てからにしたいんだけど。街の人たちの意見も聞いた方が良いだろうし」

「そうですね。私も視察は必要だと思います」

 ラナさんが賛同してくれた。

「当然私も行く」

 ベルならそう言うと思った。

「じゃあ、まずは近いうちにソブラタに行こう。転移陣も起動させたいし……あ。アリーシアさんトーマも一緒に連れて行こうか?」

「よろしいのですか? そうしていただけると助かりますが……ただ……」

 アリーシアさんは少し不安気な表情になった。

「必ず連れて帰って来て下さいね」

 母の顔だ。

 …………。

「ユイ様?」

 ラサさんが心配そうに声をかけてくれた。

 アリーシアさんもマズイ事を言ってしまったのかと慌てた表情になっている。

「ああ。ごめん。なんでもない。別の事考えてた。必ず連れて帰ってくるから安心して」

 俺の笑顔にアリーシアさんは安堵したようで、微かに息を吐いた。

 半分冗談な感じだったのに申し訳ない。

 そしてみんなも俺の表情でかなり不安になった様で、一同にホッとしている。

 俺は一体どんな表情をしていたのだろう。


 ただ、まだ慌てている人物が一人いた。

 ソブラタの首長の『アルバー』さんだ。

 アルバーさんは人の良さような中年男性で、目が細いのでいつも笑顔に見える。

 実は魔族らしいけど違いはよく分からない。

 そのアルバーさんが後ろの側近の二人と慌てた感じで何かを相談している。

 まぁ、俺がソブラタを訪問すると言ったからだろうけど。

「アルバーさ……ア、アルバー」

 年上の人を呼び捨てにするのはやっぱり気が引けて、まだ慣れない。

「前にも言ったけど別に何もしなくていいから、宿も食事も街のを利用するつもりだし」

「ハ、ハッ。しかし警護の問題もありますので、いろいろとご相談させていただければと」

 警護。俺は必要ないと思うけど、確かにアルバーさん側からすればそうはいかないよね。

「その件については後程私たちと相談しましょう」

 警護任務も治安機関の管轄なので、そのトップであるリアーネさんがアルバーさんに声をかけた。

「よろしくお願い致します」

 アルバーさんがリアーネさんに頭を下げる。

「こちらこそよろしくお願い致します。この件は警備部にとっても貴重な経験になりそうなので、お互い綿密に連携して取り掛かりましょう」

「は、はい」

 アルバーさんたちも一安心したようで、これで防衛会議は無事に終了した。

 

 そして、みんなが退室していく中、俺は引き続き行われる警護会議に参加するために残る。

 その準備が行われている間、リアーネさんの手が空いたようなので最近少し気になっていたことを聞いてみることにした。

「リアーネ。あのさ」

「はい」

 リアーネさんは両手で持ってお茶を飲んでいた陶器のコップをテーブルに置き、こちらに視線を移す。

「最初に会った時と最近と服装の雰囲気が違うけど、地下と地上で使い分けてるとか……なの?」

 リアーネさんの最近の服装は地味目なのだ。

「あ。あの時は、その……」

 リアーネさんの表情が赤くなる。

 ?

「い、色仕掛けといいますか」

 え?

「そ、そういう服装の方が交渉を有利に進められるかと、あの時は愚考致していました」

 リアーネさんは赤面しながらそう言うと、再びコップを両手で持ち、表情を隠すようにお茶を口にした。

 そ、そうだったのですか。

「ただ、あの……ユイ様があのような服装をお望みなのでしたら、私は別に……」

 コップで口元を隠したまま照れた表情で見つめられる。

「い、いや。そ、そういう意味で聞いたわけじゃ」

 寒っ。

 気が付くと、周りの女性陣からは何とも言えない冷たい目で見つめられていた。

「ちがっ、違うよ。ホントに。民族衣装的な? 興味で聞いてみただけだから!」

 完全に誤解された。


 後日、リアーネさんは胸元が少し開いた服を着ていた。


 ……ありがとうございます!


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