第11話 ラナ対ベル
館の東側のグラウンドで対峙するラナさんとベル。
グラウンドに立って改めて思う。やっぱり広い。
よくこんな広い土地を整備して塀で囲えたものだなと思う。さすが大賢者様。
でも、こんなに土地を使って国とか領主様とかは何も言ってこないのだろうか。
大賢者様だから許されているとしたら……俺は?
森の中だからまだ気付かれていないかもしれないけど、そのうちお呼び出しをくらったり?
誰の支配地にもなっていなくて好きにしていいというのが一番いいんだけど……そんなに上手くはいかないよな。偉い人と交渉とかできるかな。
「ユイ様。開始の合図をお願いしても宜しいでしょうか?」
俺は右手を上げて了解する。
まぁ、この館の事はそのうち何かは起こると思うのでそれは覚悟しておこう。
「じゃ、始め!!」
なぜ二人が戦うことになったのか、それは単に、ベルが「ずっと寝てて体が訛ってる気がするから動かしたい」そう言ったから。
自分からそんなことを言い出すくらいだからベルもきっと強いのだろう。
先に仕掛けたのはベルだった。
俺の合図と同時にラナさんへと駆け出し、ラナさんの左わき腹めがけて右回し蹴り。
それを半身になりながら左腕で受けるラナさん。そしてのままクルリと回ると右拳での裏拳を繰り出した。
ベルの右顔にもろに当たる。
慌てる俺。
ベルは笑顔。
殴られた勢いを殺すことなく、今度はベルがクルリと回って左後ろ回し蹴りを放つ。
が、ラナさんはこれを左腕で受け、右ストレートをベルの顔面へ。
今度は避けるベル。
ラナさんの右側に回り込むと、いつの間にか左手に出現させていた火球を放った。
爆音が響く。
煙が晴れて現れたラナさんは両腕を合わせていた。
ガードして防いだようだ。
「あれ? ベルは?」
ベルの姿が見当たらなくなっていて思わず呟いた俺だったが、ラナさんの視線で気付いた。
ベルは上空にいた。
「ウソだろ。浮いてる?」
掲げた右腕の先にはデカイ火球。
あれはヤバい。俺は慌てて二人から離れる。
俺の頭の上にいたセナも。
ベルは不敵な笑みを浮かべるとその巨大な火球をラナさんめがけて放つ。
まるで隕石が落下しているかのような光景。
すると二人の間に青い魔法陣が現れ、火球を受け止めた後ベルに弾き返した。
「それは自分でなんとかしなさい」
ラナさんの魔法だったようだ。
「ちぇっ」
ベルはもう一つ同じ火球を放ち。相殺させた。
爆音と同時に爆風が吹き荒れる。
……たぶん吹き荒れている。
俺はグラウンドの外まで避難していて、実際には何も感じていない。
どうやらグラウンドは結界に覆われているようだ。
やっぱり魔法の実験とかやっていたのかも。
「ふう~。スッキリー」
ベルが満足気な顔で降りてきた。
あっという間に終わった戦いだったけど、とんでもないものを見た気がする。
顔の怪我は……なんの痕もない。自己治癒能力でもあるのだろうか。もしくは回復魔法とか?
それよりも一番気になること聞こう。
「飛んでたよね? ベルって飛べるの?」
「短い間だけね。重力魔法はめちゃくちゃ魔力使うから」
「ベル。言葉遣い」
まぁまぁ。
「ラナも使えるの?」
「私も一応は使えます」
さすが。
「俺も使えるかな」
期待を込めて聞いてみると、重力魔法は魔力の消耗が激しいので一定以上の魔力がないと普通は厳しいらしいとの事だが、俺の魔力量なら可能ではないかとラナさんは言ってくれた。
「ただ習得にはそれなりの……」
と、ラナさんが説明してくれている途中で軽く飛んでみたら……
めちゃくちゃ高いところまで飛んだ。
説明の途中でごめんなさい。本当に20センチくらいジャンプする感じだったのに……この高さは死ぬ。
このまま落ちたら確実に死ぬ。
その恐怖が功を奏したのかもしれない。落ちなかった。浮くことが出来ていた。
こんなに飛べるならあの時セナに頼まなくでも良かったんじゃね? とか思ったけど。
知らなかったおかげで今の関係があるから逆に良かったのかな。
試しに飛行の仕方も探ってみたけどそれは分からなかった。
それに確かに体力がどんどん減って行ってる気がしたので、魔力切れになる前に降りることにした。
空中で切れたら……と想像するとゾッとするけど慌てずにゆっくり降りる、無事着地。
本当に死ぬかと思った。
着地して安堵したら、もしかしたら自分で飛んだ距離なのだから無事に着地できるのでは? という考えが頭に浮かんだけど……ま、試す勇気はないからどうでもいいかな。
「さすがです。ユイ様」
ラナさんが褒めてくれた。
嬉しい。
「話してる途中に飛んでごめん」
怒ってないらしい。良かった。
「ユイ様。今度はユイ様と戦いたい。です!」
嫌です。
そんなに目を輝かせてもダメです。
君のような戦闘狂じゃないんです。
そう俺は畑を耕すんです。
農民になるんです。
農園へと足早に戻った。




