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第10話 ベル

 昼食を食べ終えると俺たちは館に戻ることにした。

 夕食の支度や館の仕事があるので先に戻るとラナさんが言ってきたので俺も帰ることにしたのだ。

 もう少し釣りをしていたかった気持ちはあるけど、館に他に気になるところもあったので。

 セラートも一緒に来た。

 俺の頭の上に乗って。

 気に入ったそうだ。

 揺れるから居心地悪くないか?と聞いたらそれはそれで楽しいらしい。

 

 玄関の前でラナさんとは別れた。

 俺は館の西から南西エリアに行きたかったから。

 やっぱり広いな。

 館の庭は広大で、北側には庭園が造られていて、東側には館より低い位置にグラウンドが設けられている。そのグラウンドもとても広い。俺が通っていた中学校のグラウンドの……4倍くらい?。

 魔法の実験でもしていたのかな。

 そして目に前の西側から南西エリアには畑、というより農園が広がっている。

 ただ、野菜が獲れそうなのは一部で、ほとんどは草が伸び放題だったりで荒れている。

「だいぶ荒れていますね」

 振り返ると後ろにラナさんがいた。

 野菜のストックが減ってきたので状態を見に来たらしい。

「お恥ずかしい話なのですが、眠りにつく前は自堕落な生活をしていまして。身の回りの世話は全て"あの子"に任せっきりで」

 あの子?

「あの辺りの生きている畑もあの子が世話をしてくれていたんでしょう。だからあの状態であるんですね」

 詳しく聞くと、封印の結界の中では全ての時間が止まり、それではラナさんたちが生活できないので、シャシャート様は一部の機能を停止させた結界を張ったらしい。だが暫くの時が経ってラナさんが眠る事にした時、停止させていた機能を全て復活させてから眠りについたので、今の農園の状態はラナさんが眠る直前の状態なのだそうだ。

 それを説明し終えたラナさんは冷や汗をかき始めた。

「忘れていました。あの子の事」

 そう言うとラナさんは大急ぎで館に駆けて行った。

 気になるので俺も後を追う。

 向こうの世界にいた時から野菜を育てるのには興味があったので、釣りを早めに切り上げてここを見に来たんだけど、畑いじりはちょっと後回し。


 玄関ホールに入る。

 どこ行ったんだろ。

 変に動いてすれ違いになるのも面倒なのでここで待つことにした。


 暫くして、

 玄関ホール正面の大きな両扉が勢いよく開かれた。

「新しいご主人様どこっ!」

 12歳くらいの赤い瞳に赤毛の女の子。メイド服を着ているけど……それよりも。

 猫耳!

 獣人ってやつ? かわいい。

 でもシッポは猫のとは違うみたい。大きくてふわふわしてる。

 少女と目が合う。

「コイツ誰!?」

「コイツじゃありません!」

 少女の後から来たラナさんが少女を叱る。

「この方が新しいご主人様です」

 少女は値踏みするように俺を見る。

「ガキじゃん」

 お前もな!

 少女はラナさんに頭を叩かれる。

 性格は子供っぽい様だ。子供だけど。見た目は。

「ガキじゃありません立派なご主人様です」

 いや、立派って、何もしてませんよ。それにガキなのは正しいですから。

「ふ~ん。まあ、ラナさまがそういうのなら……っ!?」

 少女は俺の頭の上を注視した。

「セラートだ!」

 なんでなんでなんでと目を輝かせながら近づいてきた。

 まじまじと見つめられるセラートが戸惑っている。

 少女は両手をくっつけてセラートに向けて掲げる。

「乗ってくれってよ」

 セラートは首を振る。

「なんで?」

「なんか、怖い」

 わかる。

「え!? セラートとおしゃべりできるの?」

 チャンス! 威張れる。

「まぁね!」

 胸を張る。

 なんて魔法? なんて魔法? と聞かれても分かりません。

 なので体質と答えておくことにした。

「ずるい~」

 勝った。

「じゃあこの子の名前は?」

 名前?

 聞いてみる。

「ないよ」

 やっぱり。

「! 付けてくれてもいいよ」

 セラートがなにやらソワソワし始めた。

「一応聞くけど、強くなったりしないよね」

「なんで?」

 いや聞かれても。やっぱりダメか。残念。

 でも、名前ね。

 こいつとの関係はこれっきりって感じにはならなそうだし、付けておいた方が良いのかな。

「じゃあ……せ……セナ!」

 逃げ足超早かったから伝説のドライバーの名前が頭に浮かんだ。

 世代じゃないしモータースポーツ自体見た事ないけど、物凄く速かった人だっていうのは知ってる。

「セナ……うん。セナでいいよ」

 セラート……セナは気に入ってくれたようだ。嬉しそうにしている。

「セナ! セナ。セナ」

 少女がセナに何度も呼びかける。

「?」

 が、セナは首をかしげる。

 そうか。

「それが人語でのセナっていう響きだよ」

「そうなんだ」

 両膝をついて目線を合わせてあげる。

 セナは少女が繰り返す自分の名前を一生懸命聞いていた。

 いつか九官鳥みたいに言えるようになるのだろうか。

 もしそれが出来たら、俺が教えれば俺以外とも会話できるようになるんじゃ……。

 楽しみになってきた。

「セナ。セナ。私の名前は『ベル』だよ」

 セナはまた首をかしげる。

「この子の名前はベルだってさ」

 セナは少女に向けて体ごと頷く。

「ベル。順番が逆ですよ」

 ラナさんが溜め息交じりに指摘した。

 ベルは俺に視線を落とし少し見つめた後、背筋をピーンと伸ばした。

「失礼致しました! ベルと申します! ご主人様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 敬礼でもしそうな勢いだ。

「ベル。真面目にやりなさい」

 ちょっと怒ってる?

「マジメだよぅ」

 ベルは唇を尖らせる。

 ラナさんが説教モードに入りそうだからそれより先に。

「俺の名前は円川結だよ」

「つぶりゃりゃりゃ?」

 はいはい。

「ユイでいいよ」

「ユイ!」

「ベル」

 ラナさんそろそろホントに怒るかも。それに気付いたベルは慌てて言い直す。

「ユイ様。よろしくお願い致します」

 ベルは丁寧に頭を下げた。

「こちらこそ。よろしくね」

「はい。それとセナもよろしくね」

 ベルはセナの頭を優しく撫でた。

 そして。

「でもラナとセナって似てるよね。間違えちゃうかも」

 と、ヒヤッとすることを言い放った。

 無意識に釣られたのかな? そっとラナさんを見る。

「間違えないで下さいね」

 笑顔だけどなんか怖い。

 さっきまでの苛立ちがこっちに来た感じ?

「は、はい」


 気を付けよ。

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