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第6話 賢者の書

「賢者の書?」

 ワクワク

「はい。お持ちではありませんか?」

 どこに? という意味を込めて両手を広げる。

「……アイテムボックスを使えたりはしませんか?」

 あるんだ! アイテムボックス! あの超便利なポケット的なやつ。

「ああ……でもアイテムボックスに入れていたら結界には干渉できませんか。それに賢者の書を手に入れるのは別に不可能ではないですしね」

 なにやらラナさんの中で封印の結界と賢者の書は関係ないという結論が出たらしい。

 だが、俺にはそこはもうどうでもいい。

 今興味津々なのは賢者の書とアイテムボックス! なんですよ!

「ア、アイテムボックスって?」

 どうやら俺が思い浮かべた空間魔法と同じもののようだ。

 空間魔法を使える者なら使えると。ただし、空間魔法を使える人は少なく上級魔法と位置付けられていて、アイテムボックスを使える人も稀らしい。

 ……俺は? 絶対使えたい!

「どうすれば使えますか?」

 使い方は、空間に穴を開けそこに手を入れると脳内に空間の大きさ、状態、内容物が浮かんでくるので、そこから手にしたい物をイメージすれば手に出来るらしい。練度を上げればその空間を整理したりとカスタマイズ可能なのだとか。

 極めれば空間内を草原みたいにして生き物を入れられるようになるとの説もあるそうだが、それを実現できた人はいないらしい。

 まぁ、それが出来たら空間内に世界をひとつ作るのと同じだろうし、もっと飛躍すれば宇宙だって……。

 もしかしたら空間魔法を極めれば神様になれるんじゃ? と、妄想してみたけどそれには膨大は魔力が必要だろうし、寿命があるならそこまで極めるのも維持するのも無理だよね。

 それこそ神の所業。

 俺には関係ないので、妄想は止めてアイテムボックスを使えるか試してみる。

 空間に穴を開けるイメージで右腕を伸ばし手を翳す。

 ……何も起きない。使えない?

 縋るようにラナさんを見る。

「確かめても?」

「お願いします」

 何を? なんて聞きません。使えるようにして頂けるのなら好きにして下さい。

 ラナさんは俺の後ろにまわり、「失礼致します」と言って俺の背中に右手を翳した。 

「キャッ!」

 静電気?

 なんでも俺の中では膨大な魔力が渦巻いていて、それを制御しようとしたら弾かれたらしい。

「これは……外部からの制御は無理そうですね」

 つまり自分でなんとかしろと。

「あの……どうすれば。その渦巻いている?魔力とやらも全く感じないですし」

「それはおそらく内在している魔力が膨大過ぎて無意識に防衛本能が働いているのではないかと。下手に触れて暴走でもしたら大変ですので」

 怖っ。

「ど、どうしましょ」

「お任せください。お手伝い致します」

 た、頼もしい。

 これでも魔法のエキスパートですから! と、ラナさんは胸を張る。

 大きな胸を。


「では、まずは魔力……違和感が体内にないか探ってみましょう」

ラナさんは俺の背中に向けて今度は両手を翳している。

 目を瞑る。

 違和感……。

 違和感……。

 違和感……。

「目を開けてやってみては?」

「えっ!?」

 目を開けると、後ろから俺の顔を覗き込むラナさんの顔が目の前に。

 やっぱり美人。照れる。

「目を閉じると意識が脳に行きがちになる場合もあるので、目を開けたまま探るのも有効ですよ」

「な、なるほど」

 ドキドキ

 気を取り直して。

 今度は目を開けたまま。

 違和感……。

 違和感……。

 違和感……。

 …………。

 ん!?

 何か……ゴワゴワ?グルグル?

 それを捉えたまま目を瞑る。

 歪な何かが塊になったり、蛇のようにうねったり、渦巻いたり不規則に暴れ回ってる感じ?

「何コレ」

「ソレを球体にまとめていきましょう……両手で軽く押さえながらのイメージで……丸く丸く」

 一方を抑えれば別のところが飛び出す。

 そこを押さえつければまた別のところが……の繰り返し。

「ゆっくりで問題ありません。確実に形は整ってきています」

 やがてそれは太陽の様になった。

「制御成功です。お見事です。今度はソレを体内に循環させましょう。血管に流し込むようなイメージで」

 注射?

「勢いが強いです。もっとゆっくりで。一滴づつのイメージでよろしいかと」

 点滴?


 最後の一滴が落ちる


「お疲れ様でした。おめでとうございます。成功です」

 目を開ける。

「え。夕方?」

 外はオレンジ色になっていた。

「そう……ですね」

 凄く疲れた声だなと思いつつ振り返ると、ラナさんは汗だくだった。 

「だ、大丈夫ですか!」

「え、ええ。それよりもアイテムボックスを使えるか試されてみては?」

「そ、そうですね」

 フラフラだけど本当に大丈夫なのだろうか。

 心配だけど、やってみる。

「や、休みますか?」

「大丈夫です!」

 ちょっと強めに言われた。

「い、椅子に」

「大丈夫です!!」

 強めに言われた。

 はい。やります。

 躱した右手の先に黒い穴が開いた。

「そこに手を入れて中をイメージしてみて下さい。何か頭に浮かびませんか?」

 うん。視える。色々。ごちゃごちゃと。

 本も……あるな。

 なんの本なのかは分からないけど。

 練度が上がれば中にあるのが何なのか分かるようになるのかな。

 いつか整理したいな。

 今はただ山積みにされている感じ。

 とりあえず賢者の書を取るイメージをしてみる。

 手の中に本が1冊収まった。


「それ賢者の書ですよ」


 賢者の書の1篇『言語篇』なのだそうだ。


 賢者の書は全部で10冊。

『言語篇』

『生活篇』

『医療篇』

『学問篇』

『武器・武具篇』

『武道篇』

『魔導篇』

『生命篇』

『世界篇』

『神篇』

 そしてこの10冊を集めると、これら10篇に『真理篇』を加えた『大賢者の書』の封印が解かれるらしい。

 大賢者の書。なんか凄そう。読んでみたい。

「あの……目を輝かせていらっしゃるところ申し訳ないのですが、名前程大したものではないですよ」

「エ!?」

「真理といっても『シャシャート様』の世界観を独善的に書き綴ってあるだけですし、他の賢者の書も全て未完で終わっていますから」

 へ、へー。

「シャシャート様というのは?」

「私が眠りにつく前にお仕えしていた、この館の主だったお方です」

 そして世間からは大賢者と言われていたと。

 そう呼ばれるに相応しい知識と能力を持つ人であったが、変わった人でもあったらしい。

 大賢者の書をつくり始めたのも、日々の記録と自身の知識を残したかったというのもあるが、大半は自己顕示欲とあった方が面白いからという理由だったとか。

 ただ、大賢者と称えられていた人にも寿命はあったようで、世界の全てを知る前に亡くなられたそうだ。

「でも興味がおありでしたら、賢者の書を集めに旅をされるのも楽しいかもしれませんね」

 確かに。それを旅の目的にするのもアリかも。

「最後はここに戻ってくればいいわけですし」

 ん!?

 どういう事ですか? と、ラナさんを見つめる。

「大賢者の書はこの館の地下に封印されていますから」

 なるほどね。書いてる途中だったらしいしね。

「あれ? でもこの館って絶対解けない結界に覆われていたんじゃ……それだと集めてきた人、入れなないのでは?」

 激怒ものだと思うけど。

「確かにそうですね。そういう楽しい事をする面白い人でしたから、気になさらなかったのでしょう」

 楽しい事? いたずら好きかな?

 フフフフフってラナさん……この人も大概かもしれない。

 でもシャシャート様の事を思い出しているラナさんはとても楽しげだ。

 きっとシャシャート様との暮らしは本当に楽しかったのだろう。

 さみしくて永い眠りについちゃったくらいだしね。


「それはそうと、そろそろお聞きしておきたいことがあるのですが……」

 ?

「なんでしょう?」

「ご主人様のお名前を教えて頂きたいのですが」

 あっ。確かに言ってなかった。

「俺の名前は『円川 結』と言います」

「つぶりゃ」

 噛んだ。

「失礼致しました。つぶりゃ……」

「ゆいで良いですよ」

 一回『りゃ』って言っちゃうとね。

 俺も自己紹介の時によく噛んで笑われたっけ。

 担任も噛んだ時は大爆笑だったな。それからは他の教師連中も結と言いだした。

「それではユイ様。これからよろしくお願い致します」

 ラナさんは丁寧に頭を下げる。

 俺もつられて。

「こちらこそ。よろしくお願い致します」

 と頭を下げた。

 が、

「ユイ様。敬語はお止め下さい」

「イヤ、でも……」

「ユイ様は主人。私は使用人なのですから」

 それ、受け入れちゃってもいいの?

「……はい。」

 ラナさんの視線に抗えず受け入れた。


「よろしくお願……よろしく」

「はい。よろしくお願い致します」

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