59話 ゲルゲルレコード
「と、言う訳で、魔王武器魔王首ナイフと、勇者左手錫杖ゲットを祝して、乾杯ーー! 」
「かんぱーいです! 」
「ですわーーー! 」
殺人鬼との決着後、俺はゲルゲルの部屋にあった勇者の左手を素材にした錫杖を回収し、ゲル城の調理場にあったココアをかっぱらって、セレーネとリィリィと祝杯を上げていた。
「ふぃー、沁みるぜ……」
「ですですね……」
「コーヒーと違って甘いんですのね、似たような色なのに」
三者三様にココアを味わう。
少し埃っぽいゲルゲル城の図書室に、ティーカップを置く音が響いた。
そしていち早くココアを飲み干したリィリィがテーブルの上に置かれた何冊かの本を手に取る。
それに習ってシュレイドも気になった本に手を伸ばした。
「なになに、『魔界序列について』……? 」
シュレイドが手に取った本はやたらと装飾過敏で目立つ本だった。
『魔界序列とは読んで字の如く魔界の序列である。序列は魔界そのものが持つ世界制御系魔法によって決められるものとされ、序列十二位以上の者を上位序列者と呼ぶ。』
「そして上位序列者には証の紋章が浮き上がると言う……か、確かリィリィが今十三位で、ハーマングが八位、殺人鬼が九位で既に殺されていたゲルゲルは五位———」
九位に五位が負けている様じゃ、大して信憑性の無いランキングだな……
時の運で勝負が分かれる程に上位序列者の実力が切迫してるって線もあり得るけど。
「おっ、面白そうなのが見つかったですよ」
いつの間にか本棚の向こうに行っていたリィリィの声が聞こえた。
ココアをちびちびと飲んでいるセレーネを連れて行ってみると、リィリィはヨレた紙が乱雑に突っ込まれたスクラップをほいと俺に手渡した。
中身を除くと、文字がびっしり書かれた紙と地図、そして色々書き込まれている図が入っている。
文字数の多さにシュレイドがげんなりしていると、リィリィが早く読めと目で催促してきた。
仕方なく紙と地図、そして図を床に並べた。
どうやらこの図はゲルゲルの所有していた魔王武器の特性と、ゲルゲルが戦った相手の魔王武器の分析結果が記されていた。
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一通り資料を読み終わったシュレイドは、資料に無い戦利品———殺人鬼の魔王首ナイフを手に目を顰めた。
どうやらゲルゲルにとって殺人鬼は初見の相手だった様だ。
敗走するにしても魔王武器の奪取に失敗するにしても資料を作っていたゲルゲルが資料を残せなかったってのが根拠だ。
何かゲルゲルと相性の悪い能力が魔王首ナイフにあったのか、それとも……
「うーむ、魔王の首っつってたけど、どう見てもただのナイフだよな……まぁ只ならぬ魔力は感じるけども」
「この資料によると、魔王、勇者の素材から魔王武器を作成する魔王武器職人がいるらしいですですよ」
成る程、武器の作者なら能力が分かるって算段か。
「それだけじゃねーですわ! 職人の下には素材が流れてくるもの……」
「そうか! そこで待ち伏せしてりゃあ魔王のパーツ集めも楽勝だぜ!」
「話は決まったですですね……」
クックックと三人で邪悪に笑って、俺は宣言した。
「次の目的地は魔王武器職人の工房だ! 」
「あっでもゲル城からそこまで300キロぐらいあるですね……」
「えっ……」
目的地が決まって早々、出鼻を挫かれた気分になるシュレイドだった。




