58話 "劇"的なバトル
「だが足を凍らされて動けなくなった今、どう戦うってんだ? 」
「今から見せてやるよ———最も、観客は俺一人で十分なんだがな」
そういうと殺人鬼はシュレイドの顎で受け止められていたナイフを引き戻した。
「俺の固有魔法は『俺が殺した人間の人生を90分尺の映画として視聴できる』だ! その能力により手に入れたあらゆる知識、あらゆる戦略で圧倒してやる!」
「へっ、良いのかよ、自分の能力をペラペラ喋って」
「ああ、俺が俺の『人生の映画』を見る時、そっちの方が面白いからな! 」
「そりゃあ、納得だぜええええええ! 」
言いながら、二人は同時に技を放った。
シュレイドはヴォルカニックスピアを三本、殺人鬼は前の手と変わらずナイフ攻撃を。
「(首を狙う———と見せかけて"目"を潰す)」
だが、殺人鬼の思惑は外れた。
何故なら、シュレイドの放ったヴォルカニックスピアは三本ともシュレイドに当たり、シュレイドをふっとばしたのだから。
「なっ、自滅———否っ! 」
「そう、これで氷で動けないお前との距離が取れた! 」
「クソっ、予備ナイフ投げっ! 」
殺人鬼はシュレイドの思惑に気付くや否や、即飛び道具を放ってきた。
「ンなもん効かねえ! 」
安易とそれを右腕で受け止めるシュレイド、しかし!
「裂傷変換、『座席ずらし』! 」
殺人鬼が指を鳴らすと、シュレイドが受け止めたナイフは殺人鬼が最初に持っていたナイフと変わった。
「そのナイフは魔王の首から作られた特別制でね……」
「なっ、ナイフの刃がどんどん俺の腕に沈んでいく———」
くそっ、痛え!
「いや、チャンスですです! そのままその魔王武器をパクって逃げちゃいましょうです!」
「リィリィ、ナイスアイディアだ! それ採用!」
「なっ、おい! そんな劇的に劇的じゃない事をしても良いのかよ!?」
殺人鬼がシュレイドの背中に声を掛けるが、シュレイド、足を止めず!
「これが、私、ハーマングのやり方ですわ! 」
「いやセレーネお前だけ名前バレてないからってちゃっかり偽名使ってんじゃねーよ! 行くぞ」
「ごっきげんよーでーすわー! 」
「ざけんなっ、『座席ずらし』再びッ! 」
セレーネとリィリィが部屋から出て、シュレイドもそれに続こうとした時、殺人鬼のナイフを入れ替える魔法が再び発動!
シュレイドを貫き続けていた魔王武器のナイフは最初の普通なナイフに入れ替わった。
「くそっ、やっぱそう簡単には行かねーか」
「簡単に物事が進むのはつまらないだろ? 」
「ヴォルカニックスピア! 」
「何度やっても同じだ! 映画館ではお静かに!」
やはり今回ヴォルカニックスピアも前回のヴォルカニックスピアと同じ様に、奴のナイフでバラバラにされてしまった。
「間合いに入ったモノを高速でバラバラにする技———ですわねっ! 」
殺人鬼の技を看破したのはセレーネ。
「なっ、金髪女! いつから見ていた!?」
「ふふふ……"劇"的な反応感謝いたしますわ! 」
そう、彼女は部屋から出たフリをして、部屋の出入り口から中の状況を覗いていたのだ!
「クソっ、俺を差し引いて面白い事言いやがって……」
「おーほっほっほっ! 」
セレーネと殺人鬼の謎の張り合いだった。
「さて、それでどうする? 俺のサイレントシアターのタネを暴いた所でどうすると言うのだ!」
「へっ、映画ならそうやって開き直るのは死亡フラグだぜ! 」
と、言ったはいいものの、シュレイドは打開の手立てなど思い付いてはいなかった。
クソっ、近づけなくて飛び道具も使えないならどうしようもねーじゃねーか!
ん?
違和感、思考が袋小路にはまっている時特有の違和感が脳裏をよぎった。
———何故、あの時コキュートスが効いたんだ?
「そうか! お前、モノしか切れないんだな!食らえ、コキュートス!」
空気すら凍らせながらマイナスの吐息が殺人鬼に迫る。
「ふふっ、バカめ! 」
その時、殺人鬼は目を見開いた。
「何だと!? 」
「ナイフ術基本、ウインドカッター! 」
殺人鬼は上半身を巧みに捻り、魔王武器のナイフで空気を切り裂いた、すると———かまいたちの様な強い風がシュレイドに向かった!
「俺のウインドカッターは、貴様のコキュートスを巻き込んで、コキュートス・ウインドカッターへと進化した! 」
絶対零度のかまいたちがシュレイドに迫る、迫る!
「なら、風には風だ! 風魔法ハリケーンウインド発動!」
シュレイドの手のひらから嵐が解き放たれた!
それは殺人鬼のコキュートス・ウインドカッターとぶつかり合い、室内に暴風注意報がウインドブラストして、部屋中のゲルが舞い上がり狂喜乱舞の体となった!
つまり———
「俺のウインドカッターが強いか、」
「俺のハリケーンウインドが強いかの———」
「「力比べだ! 」」
制御なんて出来やしないが、全ての魔力をぶつけてやる。
シュレイドは常時発動の防御魔法を解き、無限の中の今使える全てを今の一撃に掛けた。
見たい、この嵐を超えた先にある劇的な結末を———
殺人鬼はもがく様にウインドカッターを放ち続けた。
ぶつかり合う嵐とかまいたち。
そして、一際大きい衝撃波と共に、その均衡は崩れた。
崩れた部屋の天井から日の光が差し込む。
それは長い映画を観た後に映画館から出た時に感じる眩しさと酷く似ていて——————




