55話 魔王武器
「いやー、参った。確かにあんな手をソウルテイカーは使わんだろう。シュレイド、本当の戦士よ、お前を認めよう」
「おう、お前のパンチも今までで一番痛かったぜ……」
戦いは終わった。
今は二人とも鉄拳城の医務室で治療を受けている。
「うう、背中痛え……」
「はぁ〜い、動いちゃダメですですよ〜」
治療を担当するのはいつの間にかナース服に着替えたリィリィ。
治療と言っても、治癒魔法を使う俺を見ているるだけだが。
まぁ、雰囲気は大事だもんな……
「そう言えばシュレイドよ、どうして俺の城を通りたかったんだ? 」
「ああ、それは———」
俺はドラゴン道場でエレキに襲撃された事、そのエレキが知り合いの顔に似た勇者の頭を持っていた事、そしてソイツが逃げた事諸々の事情を話した。
「成る程、魔王武器絡みか」
聞き慣れない単語が耳に止まる。
魔王武器?
「知らないのか? 最近の魔界は魔王武器の話題で持ちきりだぜ?」
「リィリィ知ってる? 」
首を横に振るリィリィ。
セレーネもぽかんとしている。
「魔王武器、魔王ソウルテイカーと勇者のバラバラになった死体から作られた武器だよ」
「え、あの人らの死体ってそんな使われ方してたんですですか!? 」
驚愕するリィリィと俺。そしてセレーネは自分の右腕をじっと見ていた。
「ああ、あれ程の強者だ、死してもその体に宿る強大な魔力は、武器の素材として最高のものなんだろう」
シュレイドはドラゴン道場でエレキと戦った時の事を思い出した。
モーニングスターの様に振り回された勇者の頭、あれは恐ろしかった。
エレキはハーマングと比べてパワーは低かったが、スピードは恐ろしく早かった。
そんな奴がパワー不足を補って余りあるぐらいには、あの頭は強力だった訳だ。
「確かに、あの強さには納得だな」
「やっぱ魔界ってとんでもねーとこですわね……」
「力の為なら死者さえ当然の様に利用する———実に魔界チックな話ですです」
シュレイドは、魔界は文字通り魔界だと実感した。
「しかし死体を武器にしてるって事は、ソウルテイカーもアイツと同じ顔の勇者ももう死んじまってるんだな……」
相打ちって話は転生前にソウルテイカーから聞いてはいたけど、ドラゴン道場であの勇者の頭を見た時、運命だとか、宿命だとか———そう言うワンチャンじみた事を思ってしまっていた。
だから今の話を聞かされて、俺は純粋にがっかりしている。
「体のパーツ全部くっ付ければ蘇るんじゃねーの? 」
ハーマングがなんて事なしにとんでもない事を言う。
「は? そんな訳ねーだろ」
「いや、案外否定は出来ないですですよ……」
「ああ、ソウルテイカーならやりそうだよな! 」
二人はさも当然と言った感じだった。
「ええ……」
どうやら、俺が思っていた以上に、ソウルテイカーはヤバい奴だったらしい……
「じゃあ、そのソウルテイカーと相打った勇者も、もしかしたら……」
「まぁ、俺はよく知らないけど、あり得なくはないと思うぞ」
そうか、それなら……
「アイツを蘇らせて、あの時の雪辱を晴らす事が出来る……」
「シュレイド? 」
セレーネが不思議そうな顔で俺の表情を覗き込んできた。
「どうやら、目指す場所が決まった様だな」
ハーマングの問いに、俺は顔を上げた。
「ああ、俺は魔王武器を全て集めて勇者を復活させる。世話になったな、鉄拳のハーマング」
「ああ、こちらこそ、今日はいい勝負ができて楽しかったぞ。また次の機会にリベンジさせてもらおう」
「あっ、ちょっと待つです! 」
割り込む様にしてリィリィが声を上げた。
「ハーマング、海辺の辺りでゲルゲルと戦ってたですよね? 」
「ああ、あれはゲルゲルの持つ魔王武器を奪う為に襲撃したんだ」
「拳のみで戦う貴方が何故武器を奪おうとしたんですの……? 」
ごもっともな疑問だ。
「確かに俺は武器なんて使わんが、持っていれば戦いに困らなそうだったんでな。だからそれを持ってるらしいゲルゲルを襲撃したんだよ、結局逃げられちまったけどな」
「成る程、つまり……」
「次はゲルゲルの持つ魔王武器を奪いに、ゲルゲルの城に行くって訳ですですか」
「ああ、進路変更だ! 」
こうして、シュレイド一行は魔王城への最短距離をちょっと逸れて、ゲル城に向かう事になったのだった。




