53話 プライド
食後、一行は闘技場に案内された。
コロッセオを思わせる円形のそれは、クセが無く、シンプルなものだった。
「所でシュレイドよ、バトルの前に少し聞きたい事がある」
と、徐にハーマングが声を掛けてきた。
「トレーニングならしてないぞ」
「いや、君の魔力の事だ……何か、何処かで感じた事があった気がする」
「ああ、それはテイカー様から継承したもんなんですよ」
リィリィが質問に答えた。
「言って大丈夫だったのか? 何かソウルテイカー周りの事情は俺あんま詳しく知らないから不安なんだが……」
「大丈夫ですよシュレイドさん。ハーマングは勇者との決戦の時にテイカー様に力を貸した一人ですもん」
勇者vsソウルテイカー
歴史的であろうその戦いを俺は詳しく知らない。
相打ちになって、勇者の首は今エレキが持っているって事ぐらいしか、知らない。
「いや、あまりその事は聞きたくなかったよ……」
ハーマングが暗い声を出す。
「やっぱ安易に情報を喋っちゃダメだったんだって! 何があるかわかんねーもん!」
「えー。ハーマング、どうしてですです? 」
「ガッカリした……」
「は? 」
「コイツが、日々のトレーニングもせず、借り物の力で立っている奴だって知って、ガッカリしたんだよおおおおおおおおおおおお! 」
コイツ、どこまで……
どこまでファイター脳なんだよッ!
「もういい、通り過ぎていいぞ、そんな奴と戦っても意味なんてないからな」
ハーマングが俺達に背を向けてとぼとぼと歩いていく。
背中が遠ざかっていく。
正直ハーマングの言葉は図星に思えた。
それでも、『戦う意味はない』ってのは否定したかった。
俺のこれまで———ドラオスと戦った時も、ガーゴイルと戦った時も、処刑人を退けた時も、ピスティを焼き滅ぼした時も、絶対者を撃ち落とした時も、全部全部ソウルテイカーから貰った力のおかげ。
それでも、勝ったのは俺で、あの強敵達を倒し尽くした俺なんだから、もうそんなナメられちゃあ倒してきたアイツらに申し訳ない。
「待てよ———」
「え、シュレイドさん? 」
「待てって言ってるだろッ、鉄拳のハーマングッッッ! 」
「あ? 」
シュレイドの声にハーマングが気怠げに振り向いた。
「俺と、俺と戦えよ。そんでテメーをボコボコに屈服させて、俺を認めさせてやるッ! 」
まだ何も考え付いてはないけれど、やるべきは俺自身をぶつける事、それは戦う前からも既に。
「ほぅ……」
「ちょっ、シュレイドさんっ! タダで通してくれるってんならとっとと行きましょうですよ!」
リィリィがシュレイドの腕を掴んで抗議する。
「へっ、よく言いましたわシュレイド! ぶーちかーませー!」
リィリィとは対象的に、セレーネはノリノリだった。
「済まねーリィリィ。俺の我儘だ」
言い訳の余地もないので言い訳しないと、リィリィは肩から力を抜いた。
「もうっ! いいです、いいですですよっ」
そう言って彼女はシュレイドの腕から手を離すと、「絶対勝つですよ! 」とシュレイドの背中に蹴りを入れた。
そして戦いは始まった。
「シンプルパンチ! 」
最初に攻撃を放ったのはハーマング。
単純に正拳突きだった。
しかし単純———いや、シンプル故に、ハーマングの力強さをダイレクトに伝えるのだ!
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああ! 」
ハーマングのパンチを食らったシュレイドは、闘技場の壁を突き破り、遠くまで吹っ飛んだ!
「ふんっ! 軽いわァ!」
吹っ飛ぶシュレイドはそんなセリフが聞こえた気がした。
クソっ、
「こんな時でもっ、ヴォルカニックスピア! 」
シュレイドは吹っ飛ばされながらヴォルカニックスピアを発動、それを掴んでシュレイドは闘技場に戻った。




