49話 ディザスターウェポンⅡ
さて———クソ忌々しい重圧の抜け目を見つけられたはいいが、隙を見せたら即あのとんでもねぇ炎槍でグッサリだ……ここは堅実に攻めるッ!
「まずはそこの炎槍野郎、テメェからだ! 」
「来るなら来い! 」
へっ、這いつくばった状態でいい表情するじゃねぇか!
だが、アタシが教えてやるぜ、気合いじゃ覆せない力の差ってやつをよォ!
「千客万雷ッ! 」
無数に散ったエレキの身体一つ一つが雷となり、一点、シュレイドに向けて落ちる。
激しい閃光が道場の室内を包み、そして晴れたその時———
「電気マッサージにもならねぇぜ! 」
露わになったのは無傷のシュレイドだった!
「クソがっ、何で効いてねーんだよッ! 」
「企業秘密だ! 」
ドヤ顔のシュレイド、そして彼はその生意気な顔のまま続けた。
「お前の攻撃、電気マッサージ、辺りを包む光、これで逆転の策を思い付いたぜ! ウォーターパニック!」
!?
水水水
水が部屋を満たす。
不味いッ、真水は電気を通さない……野郎、間抜けそうに見えて知識が有りやがるッ!
「リィリィ、がぼがーーー! 」
シュレイドが叫ぶ、何かの合図か———?
おそらくはリィリィに重圧を解除させる合図。
重圧で這いつくばってた時は狙いがつけられないかなんかで打たれなかった炎槍がまた来るッ!
「出し惜しみなんか、してらんねぇなぁあああああ———ッ! 」
拡散させた自身を戻すよりも優先して、メインのエレキは秘策の武器を取り出す。
モーニングスター。鎖の先にトゲ鉄球を付けたそれによく似たその武器は、実際、黒髪の女の頭部であった。
エレキはそれをモーニングスターよろしく振り回し、部屋ごと真水に満たされた密室を破壊した。
「あっクソ、水が流れる……」
「残念だったなァ! 」
作戦が失敗した愚か者を見下ろしながら、空中で自身を再構築した。
もう隠せない秘策の武器を振り回しながら。
「くくっ、野郎! 今度こそビリビリにしてやるぜ、フルパワーの雷と、この勇者の頭でなぁ!」
宣言し、シュレイドにガンを飛ばすエレキ。
しかし彼女が目にしたものは想定外、想定のしようも無いものだった。
「ハムカツメロン……? 」
困惑の表情を浮かべるシュレイド、そしてこちらに向けられた二十数本の炎槍———
エレキは理解する。
この状況の全てではなく、最低限今の自分に必要な事を。
死ぬ。
ここにいたらまず間違い無く死ぬ。
だから逃げなければならない。
それは反射にも似た行動原理。
思考するまでも無く、生命が元々持っている生きる為の機能でエレキは離脱する。
自身の雷の固有魔法を過去最高の力で離脱に使った。
雷の速度で移動する上での最大効率になる様に自身を分解。
雷に追い付かれてもダメージが最小で済む様に分解分身それぞれを別方向に逃走。
辺りの景色が山々から平野に変わった頃、ここまで来てようやく思考できる余裕が出来て、エレキは嘆息した。
自分がここまで逃げる事に優れていたのだという事と、逃げる事に迷わなかった事に———




