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46話 ドラゴン道場露天風呂!



 湯気が漂い星が踊る。

 ここはドラゴン道場露天風呂。


 あわあわ、ごしごし。


 前に風呂に入ったのはもういつの話になるのだろうか、身体を洗いながらセレーネは物思いに耽っていた。


 泡を手に纏わせ、それを自らの身体に滑らせる。

 所々引っ掛かる。


 「随分と、遠い所まで来ましたわね……」


 傷口に泡が入って染みる。

 その度に思い出す。


 王都から逃げ出し、ドレッドと出会い、別れ、当てもなく逃げ回り、シュレイドと出会い、置き去りにされ、因縁の王都でめちゃくちゃな決着が着いた。


 ここの傷はドレッドと逃げた時に、ここの傷は風の絶対者との戦いで、ここの傷は———


 全て鮮明に思い出せる。

 それだけ濃密な日々だった。


 身体に染み付いた土埃と汗が全て洗い流されても、まだ身体の所々で痛みが主張を続けていた。


 「ドレッド、シュレイド、リィリィ……」


 セレーネは何を思ったか、いや、何も思わずに、ただ自然と親しい人々の名前を口にした。


 「あちっ、」


 身体を洗ったので、湯船に浸かる。

 肩まで浸かる。


 「ふい〜、極楽極楽ですわ〜! 」


 温水に包まれて、身体が溶ける様な感覚。


 蕩けて、戻って、その時に疲れだけは戻り忘れて、そうしてセレーネは久々のお風呂から出た。


 


 いつのまにか道場の風呂に入っていたセレーネと道場の廊下で再開した。


 「———って訳でお前だけ修行する事になったぞ、がんばえ〜! 」


 シュレイドは、リィリィの事を伏せつつ、ざっくりと情報を伝えた。

 こんな適当な説明でも「分かりましたわぁ〜」と納得してくれるちょろい所、俺は好きだぞセレーネ。


 セレーネは風呂上がりの熱を帯びた体に藍色の浴衣を纏っていた。


 浴衣は和風旅館によくある浴衣みたいな感じで、セレーネの若干むっちりした身体のラインが出ていてエロスを感じる。


 あとご自慢の金髪縦ロールのツヤが戻ってんじゃん、どういう仕組みなんだアレ?


 「しかし久々のお風呂はいいですわね! 」


 「なんかさっぱりしたよな、臭くねぇし」


 「ホントですの! あれで結構匂いは気になってたんですのよ」


 自身の体臭をくんくんと嗅ぐセレーネ。

 その仕草が妙に色っぽく、目のやりどころに困った。


 冷静に見るとセレーネってめっちゃ美少女だよな……ようやっと風呂に入って匂いが取れたから100%純粋な美少女だよな……


 むぅ、なんかじっと見ちゃうしなんか照れ臭えな……


 シュレイドは早々に話を切り上げる事にした。


 「じゃ、じゃあ俺は部屋で寝るわ! おやすみな〜!」


 「おやすみですわ〜! 」


 手を振るセレーネだったが、そうすると薄布に包まれた胸も揺れる訳で……


 シュレイドのダッシュは早まった。




 ドンっ!


 「うわっ! 」


 廊下の曲がり角で何かにぶつかった様だ。


 「廊下は走っちゃダメだよー」


 マナ師匠だった。


 懐かしい怒られ方だなぁ……


 「す、すいませんでした……」


 「かっかっかっ! 」


 ははは……




 シュレイドは、自分に貸してもらった客室に戻った。


 「引き戸ガラガラーっと、いやー、風呂上がりのセレーネはエッチだったなぁ〜」


 なんて油断した事をのたまいながら部屋に入ったもんだから———


 桃色の着物がはだけ、肩と脇が露出した後ろ姿。

 着物の色とは別のピンクの髪を慌てて揺らす彼女に———


 「あっ、シュレイドさん、どうもです……」


 俺の布団の上で着物を着崩して待っていたリィリィに聞かれてしまうのであった。




 土下座。

 それは和の心だ———。


 「どうか今のは聞かなかった事にして下さい……」


 シュレイドは土下座していた。


 「あんっ、そんな、頭なんて下げられたら……」


 リィリィは甘い声を漏らした、シュレイドの頭を足で踏みつけながら。


 「こんの、真性のサディストめ……」


 踏まれた頭で恨めしげにリィリィを見上げた。


 するとリィリィは、


 「そんな事言って良いんですですぅ〜? 」


 と、踏みつけを強めた。


 「ごめんなさいリィリィ様ァーーー! 」


 「あははっ、いつも強いシュレイドさんがこんな無様な姿に……おらっ、もっと鳴けですです! 」


 リィリィの頬は高揚し、眼には今までに見たこともない光を宿す。

 有り体に言えば、リィリィはハイになっている。


 「あうーーーん! 」


 シュレイドは、リィリィと熱い夜を過ごした。




 翌朝、鶏の鳴き声で目を覚ました俺は、トイレに向かってまだ早朝の冷たさが居座る道場の廊下を小走りで進んでいた。


 「ん? 」


 なんか音が聞こえる。

 覗くと、マナ師匠がラジオ体操みたいな謎の動きをしていた。


 こんな早くからトレーニングだろうか? だとしたら流石師匠と呼ばれてるだけはある勤勉さだな……


 ……

 トイレに急ご。




 『2×3= 4×8= 6×6= ……』


 『5×2= 7×3= 9×8= ……』


 数式がびっしりと書かれた紙が2枚、机に並んでいますわ。


 ———さんすうドリル……でしょうか?


 まさかこの私にこれをやれと……?


 「さぁ、修行を始めようか! 」

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