44話 ドラゴン道場
竹林を貫く石段を上り切ると、そこは霊峰望むドラゴン道場。
写真で見た沖縄の首里城じみた赤い外観は、侘び寂びとカッコ良さが同居している。
3メートル以上ある立派な正門、扉に手を掛けようとしたシュレイドをリィリィが止める。
「その扉はハリボテで開かないんで、こっちの裏門から入るです。」
「すげぇ性格の悪い罠だな……」
「ドラゴン道場の教えは『正直者はバカを見る』です」
捻くれてんなぁ……
裏門から中に入ると、外観とは全く異なる無機質な光景が広がっていた。
鉄と石で形作られた道場を奥へと進んでいると、後ろから声を掛けられた。
「おっ、リィリィじゃねーか」
「師匠じゃねーですか、お久です」
胸元が空いた赤いチャイナドレスを着た女性にリィリィが親しげに返事をした。
「この人がワタシの師匠のドラゴン=マナですです。」
マナと呼ばれた女性はかかっと笑うと俺に視線を向けてきた。
「マナでーす。んでリィリィ、コイツら誰よ? 」
「強い魔法を使うシュレイドさんと、目が良いセレーネですです。」
「シュレイドっす」「セレーネですわ! 」
マナ師匠は俺達を舐める様に見て、またかかっと笑った。
「ふーんシュレイド君とセレーネちゃんねぇ……うちの弟子が世話になったっぽいしここは師匠として茶の一杯でも出すべきかね? 」
「砂糖多めで頼むです」
「一番良い茶葉でお願いしますわ! 」
「あっ、俺アイスで」
「図々しいね君ら……」
コトッ。
客間に案内された俺達の前にお茶が置かれる。
一口ごくり。
長い石段を登った体に染み渡る冷たさだった。
「どうだい、アタシのお茶は? 」
低い机に肘をついてマナ師匠が尋ねる。
そんな体制を取るもんだから服の隙間から色々見えそうだったが……ちっ、ギリギリで見えねぇな……
「……」
「シュレイド? 」
セレーネの声で我に帰る。
いけないいけない、初対面の人をジロジロ見るなんて良くないからな!
「あっ、えっと……何だっけ? 」
「お茶……美味しかったカナ? 」
マナ師匠の語気が若干強く聞こえたが、気のせいという事にしておこう。
「冷たくて美味しかったです」
「それは良かった。このお茶は微弱な氷魔法で冷たくしてるんだよ」
「へー、魔法ってそんな便利な事も出来るんすね。」
俺が氷魔法なんて使ったらお茶どころかコップまで氷付いちまうもん。
……?
鋭い視線を感じる。
と、言うかマナ師匠の視線が鋭い。
「おや、君は確かリィリィの紹介では強い魔法を使う筈だが……? 」
あっ、
失言だったすまんとリィリィを見ると、彼女は呆れた表情でため息を吐いた。
「はぁ、まぁ隠し通せるとは思ってねーでしたけど、こんな早くバレるもんですですかねぇ……」
「どうゆー事か説明してもらおうかな我が弟子〜! 」
「シュレイドさんはあの魔王サマの力の継承者なんですよ、だから強い魔法"しか"使えないんですです。」
マナ師匠は納得した様で、鋭い視線を緩めた。
「あーなるなる、この子がテイカーちゃんの残骸ってやつかー。成る程ねぇ〜。」
「ソウルテイカーを知ってるんすか!? 」
流石に聞き逃せない。
ソウルテイカーが元々居たであろう魔界なら、彼女の知り合いに会える可能性は高かったが、まさかこんなに早く出会えるとは。
「まぁね、昔ちょっとだけ戦ったりしたよ。」
「どんな……いえ、どんな戦い方してました、ソウルテイカーは? 」
彼女の戦術を詳しく知ることができれば、今の脳死ヴォルカニックスピア連打戦法以外の戦い方ができるようになるかもしれない。
「んー、まずデカい魔法を連発してきて、凄い嫌なタイミングでヴォルカニックスピアっていう伝説レベルの魔法を打ってきて———みたいな感じ? 」
「やっぱ強いよなヴォルカニックスピア……」
「ありゃ、お気に召さなかったかな? 」
いけない、ガッカリが表情に出てたみたいだ。
「いえ、問題ないっす。」




