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43話 新大陸




 船に揺られて一ヶ月程、ついにフューチャーフックの面々は新大陸に辿り着いた。


 「うう……まだ地面が揺れてる感覚がしますわ……」


 「すげぇぞテメェ等! 本当にあったんだ! 」


 「やりやしたね船長! 」「フューチャーフック最強! 」「我らが歴史的活躍は未来永劫語り継がれるだろう……」


 歓喜するフューチャーフックの面々を横目に、シュレイドは行き着いたこの場所を見渡した。


 凶悪なる海を抜け、辿り着いた新大陸。

 赤土が舞い、雨雲と雷鳴が踊るこの土地を踏みしめて、シュレイドは固唾を飲んだ。


 皆んな見た事も無い景色に打ち震えていた。




 ———リィリィを除いては。


 困惑の表情、額に光る汗……


 「リィリィ、どうかしたか? 」

 やっとの思いの新大陸とは言え、その表情は些か変だ。


 「シュレイドさん……ちょっと耳貸すです。」


 小声で言ってくる。


 「叫んだりすんなよ」とか軽口を叩こうかと思ったが、彼女の表情を見るに、とてもそんな事が言える雰囲気ではない。

 俺は無言で耳を寄せた。




 「ここ……魔界ですです。」


 ———は?


 「何だって! 」と声を出しそうになって口に手を突っ込まれる。


 どう言う事だ?

 ここが魔界?

 ゲートでしか出入りできない別世界だと聞いていたんだが……

 しかしリィリィに嘘を言っている雰囲気は感じられない。

 いつものおちゃらけた感じが全く無いのだ。


 「詳しく聞かせてくれよ。人間界から魔界、魔界から人間界に行くにはゲートを通るしかない筈だろ? 」


 「です……、人間界と魔界が地続き、もとい海続きなんて話、元魔界序列12位のワタシですら知らなかった。」


 考えられる可能性は二つですですとリィリィが続ける。


 「一つは航海中気が付かずにゲートを潜ってしまったって可能性ですです。それも船ごと」


 それだと何故人間界の海にゲートストーンがあったのかっていう疑問が残るですですけど……


 「二つ目は、本当に魔界と人間界が同じ世界にあったって可能性ですです。これが本当なら魔界の歴史がひっくり返るですね……」


 ふむ、なるほど。


 「航海中にゲートを潜ってしまった可能性が危険だな。仮にそっちだったらなんか罠臭い。」


 「ですですね。そもそもここは魔界、警戒するに越した事はないですです。」


 「とりあえず船の皆んなにも警戒を呼びかけとくか、」


 リィリィから離れようとすると、服の裾を摘まれて止められた。


 「ここが魔界だってことは、もう暫く伏せといてほしいです。」


 リィリィの表情を見てシュレイドは察した。

 やっとの思いで辿り着いた新大陸が魔界だったなんて知れたらフューチャーフックの面々はショックだろうし、リィリィに他の考えもあるのだろう。


 「分かった。」




 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!


 超弩級の衝撃が赤き大地に響き渡る。


 「な、なんだぁ! 」


 山二つ分ほど遠方に見えるは鉄拳振るう豪傑と、それを柔なそうなゲル状の何かであしらう細身の男。


 「あっあれは! 」


 「知っているのかリィリィ! 」


 「魔界序列8位、鉄拳のハーマングに魔界序列5位、否定(アンチ)のゲルゲルですです! 」


 あんな遠くで戦ってる衝撃がここまで届く時点で相当だが、序列8位と5位となるとかなりヤバそうだ。


 「出来れば戦いたくねぇな……」


 「やり過ごすです」


 そうだな……

 ここは静かに通り過ぎて安全地帯で腰を落ち着けたい所だ。


 「リィリィ、何やってるですの? 」


 いきなり現れたセレーネがリィリィの後ろから抱き付いた。


 「あひゃん! 」


 びっくりしたリィリィが思わず大きな声を上げる。


 「ばっ……」


 せっかく静かにやり過ごそうって時だったのに……


 俺とリィリィがセレーネをジトっと見るとセレーネは、


 「あれ、私何かやっちゃいました? 」


 と、首を傾げた。


 「ああ、とんでもねー事をな! 」

 「もうとっとと逃げるしかねーですです! 」


 一人だけ状況を分かってないセレーネの手を引いて、三人は逃げ出した。


 「ちょっ、フューチャーフックの皆さんを置いてくんですの? 」


 「魔界の奴らは自分より弱い者にはあんまり興味を示さないので多分大丈夫ですです。」


 「え、魔界? 今魔界って……」


 「ああもう後で説明するから黙って付いてくるですー! 」


 セレーネはそれに頷いた。


 「しかしリィリィ、何処かアテはあるのか? 」


 「ワタシが昔世話になってたドラゴン道場を頼るです! 昔と地形が大して変わってなければこの近くですですから。」


 「了解だ! 」


 俺は短く返事をして、リィリィの背中を追い続けた。

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