42話 珍味!謎の巨大魚の塩焼き
密航する船を間違えた……?
「この船は、海賊船フューチャーフック号だ! 」
「いや2回も言わなくて大丈夫です船長さん。」
確かに俺達が密航する為に港で船を探したのは視界の悪い夜だったが……
「はぁ……どおりでおかしいと思ったです。当初の予定じゃ3日で目的地に着いてる筈ですですから」
リィリィがそう言って肩を落とす。
「で、この船は何処に向かってるですです? 」
「そ、そうだ! もう乗り込んでから5日も経ってる……今どの辺なんだよ? 」
俺とリィリィが船長に詰め寄ると、船長は待ってましたと言わんばかりに歯を見せた。
「ふっ、この船は……俺様のフューチャーフックは———」
言葉の途中でタメを作り、息を一杯吸ってから船長は続けた。
「"新大陸"をっ、目指しているッッッ! 」
響き渡る船長の怒号の様な声に一瞬脳がフリーズした。
新……大陸……?
「下ろしてですううううううううう! 」
「ガハハ! もう海のど真ん中よ、運が悪かったなお前ら! 」
こうして、俺達は無謀にも新大陸を目指す泥舟、フューチャーフックと運命を共にする事になったのだった。
「———んでよォ、ガキの頃にずっと見ていた地平線の先を見に行きたくなったって訳さ! 」
「ロマンだなぁ……」
俺達はあれからフューチャーフックの客権手伝いとして船に乗っていた。
船員達ともなんだかんだで上手くいっており、それなりに楽しい航海だ。
今は船長の話を聞いていた所で、その話が面白い。
ゲームのサブストーリーが目の前で起こってる感じ。
実際に生きてる人から会話して聞くから、伝わってくるイメージの画質が良いのだろう。
「とわ言えホントにあるんですかね、その新大陸とやらは。」
リィリィがカニをしゃぶりながら冷めた視線を俺と船長に向ける。
すると、船長はガハハと笑ってこう答えた。
「分からねぇ! 」
「は? 」
「分からねぇから、見に行くんだよ嬢ちゃん。」
船長の言葉が聞こえたのか、船中から声が上がった。
「そうだぜ船長ー! 」「新大陸に一番乗りよォ! 」「フューチャーフック最強! フューチャーフック最強! 」
「はぁ……本当にとんでもない船に乗っちゃったですですね……」
リィリィは額に手を当てて俯いた後、またカニをもっちゃもっちゃと食い始めた。
食後、俺達は密航時代に使っていた物資置き場に集まっていた。
「ヤバい船に乗っちゃいましたわね……」
もう何度目かの切り出しから俺達の会議は始まった。
「ですです、しかしまぁ新大陸とは……」
リィリィの表情からは苛立ちよりも呆れが伺える。
凡ミス、まさかの乗り違えで豪華客船は泥舟と化した!
三人の間に暗い空気が流れる。
俺は何か上手い事でも言えないかと考えた。
「そうだ! 」
「ん? 何か思い付いたです? 」
「ああ! 俺の氷魔法コキュートスで海を凍らせてしまえば歩いて帰れるぞ! 」
シュレイドのダイナミックな提案に、セレーネは表情を明るくしたが、リィリィは険しい顔のままだ。
「一瞬アリかと思ったですけど、何の目印も無い海を歩き回るぐらいなら、まだこの泥舟に乗ってた方がマシですですよ。」
一理ある。いや二里はあるな……
論破された俺は渋々黙り込む事にした。
しかしシュレイドが黙っても、これといって良いアイデアは浮き出ない。
そんな時だった。
「デケェ魚が釣れたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」
甲板の方から声がした。
「……行ってみますわ。」
「ワタシも行くです! 考えても埒が開かねーですですから。」
二人が足早に甲板へ向かう。
「まっ、待って! 俺も魚食いてぇ! 」
釣れたと言うデケェ魚は紫色の背びれをした、マグロぐらいのサイズの魚だった。
「食えんのコレ? 」
船員に尋ねると
「分かんねーな、見た事も無ぇ。」
……
甲板に集まった面々が一様に巨大魚を凝視した。
果たしてコイツは食えるのか……
「あの……皆さんが食わない様なら私食べたいんですけど……」
セレーネががめつく巨大魚に手を伸ばす。
「辞めとけよ、出会ったばかりの頃にそんな感じでお前死にかけたじゃんか……」
「もしヤバくなったら、あの時の様にお願いしますわ! 」
「お前、どうしてそこまで……」
「仲間を、信じているからですわ。シュレイド、リィリィ! 」
信頼が重い。
———かくして、巨大魚実食タイムが始まった。
刺身は危険そうだから、取り敢えず焼いてみようぜ!
船員のその言葉から、料理は塩焼きに決まった。
「よし、ここは俺のヴォルカニックスピアで強めに焼いて———」
「魚が消し炭になっちゃうですからそこでじっとしてろですです」
リィリィがシュレイドにいつになく鋭い視線を向ける。
森のビッグクェークの件がまだ尾を引いている様だった。
「完成ですわ! 」
巨大魚の肉の一部を切り取り、槍に刺して焼いた塩焼きがセレーネの前に差し出された。
「なぁ嬢ちゃん本当に食うのか? 俺らも一応海賊だし嬢ちゃんみてーな子に毒見させる程男が廃ってねーって言うか……」
船員がセレーネに気を使って何か言っている様だったが、セレーネはそれを「あげませんわよ! 」と一蹴。
船員は諦めた様に肩を落とした。
俺はその肩に手を置くと、
「まぁ、気にすんなよ船員さん。アイツはああいうヤツなんだ。」
と励ました。
「ウス……」
そしてみんなで巨大魚を食べるセレーネを見守る。
「……あの、そんなに見られてると食べずらいんですけど……」
「安心しろセレーネ、お前に何があってもすぐに俺のパンチを叩き込んでやる! 」
「いや、毒じゃない時はパンチすんじゃねーですの! 」
と言うと彼女はガツガツと巨大魚の塩焼きを食べ始めた。
「ああ、そんなに一気に食ったら……」
「こう言う時は度胸ですのよ! 」
"覚悟"が違うお嬢様だった。
〜半日後〜
セレーネに何ともないと言う事で、船員の皆んなと巨大魚の塩焼きを食べた。
臭みはあるけどホロホロした食感は悪くない。
うーむ、これは……
「58点の味ですですね! 」
「うん、今回に関してはリィリィと同じ感想だよ。」
そんなこんなで航海は続く。
まぁ、58点の魚が食える航海なら、もう暫くは良いかなと……




