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41話 ワイルドハント


 密航から5日目。

 俺は落ちてきたセレーネに踏んづけられて目を覚ました。


 「大変ですわシュレイド! 」

 「嵐が来たです! 」


 ワイルドハントの始まりだった。


 眠りから覚めたばかりの目を擦りながら耳を澄ますと、甲板の方が騒がしい。


 「このままじゃあ沈みますぜ船長! 」

 「仕方ない、重い物資を少し捨てるぞ! 」


 何やら不穏な会話だ。


 「こりゃ俺たちがバレるのも時間の問題だな……」


 「ですですね……」


 三人揃って頭を抱えた。


 「そうですわ! 」


 「何か思い付いたのかセレーネ! 」


 「密航なんてまどろっこしい事せず、この船に乗ってる奴ら全員ぶっ飛ばしてこの船をジャックしてやりゃあ良いんですわ! 」


 名案とばかりに指を鳴らすセレーネだったが、その作戦には大きな欠陥があるぜ。


 「俺たちには船を動かす知識もないし、何もねー海の地図なんて読めないだろ? 」


 あっそう言えばという顔のセレーネを横目にリィリィが続けた。


 「そもそもシュレイドさんが戦ったら船が沈むですです。」


 結局素直に甲板に出て謝ろうと言う事になった。




 「うおっ誰だお前等! 」


 甲板に出ると、船員の一人と思しきバンダナ男に呼び止められるが、構わず進む。


 打ちつける雨が、風が、嵐が甲板にぶつかり音を奏でる。

 自然が作るオーケストラは、大きな、とても大きなパワーをシュレイドに感じさせた。


 「今から俺の魔法であの嵐を吹き飛ばす! 邪魔したら手元が狂ってこの船が沈むからな! 」


 「いきなり来て何言ってん———」


 船員が戸惑っているうちにとっとと魔法を発動する。


 風の絶対者戦で使った風魔法、ハリケーンウインドだ!


 シュレイドの手の上に小さなそよ風が起きる。

 それは吹き荒ぶ嵐中を難なく突き進み、嵐の中心でその真の力を解き放った。


 黒黒とした雨雲や嵐はミキサーにかけられたかの様に粉々になり、空には日の光が輝く。


 「す、凄え……」

 「パネェですです」

 「大迫力ですわね! 」


 シュレイドを含むその場の全員が、その威力に口を開けて驚くばかりだった。





 「———で、天空王国から亡命する為に密航したと。」


 「ああ、けど嵐を吹き飛ばしてやったですですし、そんなちょっとの事はチャラにしろです。」


 嵐を吹き飛ばした後、俺達はこの船の船長に事情を話していた。


 話し合いは大事だ。

 こんな海のど真ん中で争ったら、そりゃ最強の俺は勝てるだろうけど……船が沈んだら一生海を彷徨う事になっちまう。


 「めちゃくちゃ図々しいな嬢ちゃん……」


 「あん? 何か文句あるんですです? こっちには嵐をも吹き飛ばすシュレイドさんが座すんですですよ? 」


 リィリィは現在虎の威を借る狐モードだ。

 超ケンカ腰。


 やれやれ……リィリィも調子のいい奴だぜ。


 「おおそうだぜ船長サンよぉ? こんな船なんて俺の気分次第でヴォルカニックスピアだぜぇ! 」


 へっ、俺だって当然楽勝な相手に畏まるワケねぇよなぁ!


 「そうですです! さっ、セレーネも何か言ってやるです! 」


 リィリィがセレーネに声を掛け、俺もセレーネの方を見ると……


 「もっきゅもっきゅ……」


 ロブスター料理を食べていた。


 「はぁ……」


 何か毒気を抜かれた気分だ。




 「あーオホンっ。話を続けてもいいかね? 」


 「あ? 誰が勝手に喋っていいっつったよ? 」


 「いやシュレイドさん、もうそのノリ良いですから。」


 リィリィに嗜められてしまった。

 お前が始めた話だろうがよぉとでも言いたくなったが、これ以上よく知らない船長さんの前で無様は晒せないので、いい加減黙る事にした。


 「早速だが、勘違いを解こうと思う。」


 白い髭を揺らし、低い声で船長は呟いた。


 「誤解ですです? 」


 「ああ、君達はこの船をロイヤルウインド号だと思っている様だが、それは違う。」


 船長は目付きを鋭くして、こう続けた。


 「この船は、海賊船フューチャーフック号だ! 」

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