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39話 叶わぬ夢


 ○□高校っと。


 「———っ! 」

 検索エンジンのサジェストに映ったワードに俺は凍り付いた。

 『○□高校 交通事故』


 ……ま、まさかな。


 クリック。


 去年の秋頃の日付、というか、ハムカツメロンと戦ったあの日だ。


 『○□高校二年生の水無影理(みずなしえいり)さん16歳は、○○市のゲームセンターに遊びに行った帰り、トラックに跳ねられて意識不明の重体、その後、亡くなりました。』


 ———は?

 は?は?は?


 「は? ———




 高3の春になった。

 部屋の片隅に置かれたコントローラーは埃を被り、あれだけ拘ったパーツも未開封で捨て置かれている。


 燃えカスになった。


 あの時俺は一生あの一瞬の事を考え続けるのだろうと思ったが、叶わないと分かればそんなに固執することはなく、あっさりと全てを諦めたのだ。


 使う事もなくなった金でアニメを見まくった。

 アニメのキャラクターは強くてかっこ良くて、それでいて悉く因縁に決着が付くもんだから妬ましかった。


 別に趣味を一つ失ったからって対して生活は変わらない。

 飯食って、学校行って、寝て、飯食って、寝るまでアニメ見て、寝て、学校行って寝て……


 何も変わらない。

 アニメじゃ重要人物が死ぬと主人公が引きこもったり涙を流したりする事もあったが、俺にはそれもなく、淡々と日々を浪費した。

 ただただ虚しかった。




 「え? 豚島の奴、彼女できたの!? 」

 友達の友達越しにそんな事を聞いた。


 家に帰ってひたすらアニメを見た。


 「日曜ゲーセン行かね? 」

 「あー、悪いその日は行けそうもねーわ」

 適当に断った。




 家に帰って泥の様に寝て起きた。


 午前10時、時計を見てホッとした。

 その日は学校をサボって散歩した。


 凹んだガードレールと花束が目に付く。

 別にアイツが死んだ場所って訳でもないが、走って逃げた。


 コーヒーを久々に飲んだら空腹の胃に響いて腹を壊した。

 うんこしてぇ……


 近場にトイレは……

 と、辺りを見渡すとゲーセンが目に留まる。


 「ちっ……」


 ゲーセンの便座はやたら冷たかった。


 昼前のゲーセンは人が少ない。

 麻雀ゲームやってる老人が数名ぐらいだ。


 トイレを借りた手前何もせずには帰れない。

 そんなルールはないけれど、財布から100円硬貨を引き抜いて親指で弾く。

 昨日見たアニメキャラの真似だ。アニメじゃ500円玉だったけど……


 格闘ゲーム『ウォーガイズ』の筐体に座る。

 ゲーセンには結構通った事があったけど、このゲーム以外は全くやんなかったから、新しく始めるには抵抗があったのだ。


 離れていただけで嫌いになった訳じゃない、だから平気だ。


 『キャラクターセレクト! 』

 使うキャラを選ぶ。

 馬鹿山田が選んだのはシュレイドだった。




 半年以上ぶりの格ゲーは散々で、クソ程負けて、再チャレンジしまくってたら財布からお札が2枚消えた。


 「ははっ、ははははははっ……」


 帰って布団をかぶって大笑いした。

 久々にやった格ゲーは思いの外楽しかったみたいだ。


 データを消したカセットをゲーム機に差し込む。

 埃を払ったコントローラーは新品みたいにピカピカで、それだけでテンションが上がった。


 カーテンの隙間から少しだけ光が差し込む自室で、これから一晩中ゲームをするのだ。


 アニメのアイツみたいに、かっこよく言おう。


 「さぁ、ゲームスタートだ! 」




 「ふぁ〜良く寝たぁ〜」


 何か昔の夢を見た気がするぜ。

 忘れたけど。


 「にゅわぁ〜おはようですです。」

 「媚び媚びな欠伸ですわねリィリィ……」

 「セレーネさんもやってみるです」

 「にゅ、にゅわー」

 「声硬った! 才能ねーです。」

 「ぴえんですわよ! 」


 ……俺もやってみるか!


 「にゅわ〜(高音)」


 「えっシュレイドさんうっま! 」

 「やりますわねシュレイド……」


 二人が手放しで褒めてくる。

 異世界無双だなぁ……

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