38話 悪い夢に
風の絶対者を撃破した3日後、絶対者を倒した方法がクソ過ぎてバレたら流石にマズいという事で、事の真相が知れ渡る前に雲隠れしちまおうという話になった。
人知れず長距離を移動するなら船だ、馬車は乗り継ぐ必要があるし、歩きは無謀だから。
船に乗るにも人目につくが……
そうして、シュレイド達は密航で王都を脱出する事にしたのだった。
草木も眠る丑三時、ドレスを新調したセレーネと、ささやかに髪留めを変えたリィリィと共に、シュレイドは王都の最寄りの港で下調べした遠国へと向かう船、ロイヤルウインド号を探している。
「木造船で赤い帆の……」
「あっ、あれじゃないですの! 」
そうかも、暗くて良く見えないけど、目が良いセレーネが言うならそうなんだろう。
「情報とちょっと違いませんです? 」
「素人が船の違いなんて分かるわけねーじゃん」
「木造で赤い帆、なんも違ってねーですわ! 」
それもそうですですね。とリィリィも納得。
ギシギシ軋んでぷかぷか揺れる船にこそこそ乗り込み、樽の下に三人で隠れた。
「ちょっと臭いですよシュレイドさん」
心外な、
「俺じゃねーよ、セレーネだろ? 」
「スンスン、そんな匂いしますの? 」
くんくん、腐っ。
生ゴミみてーな匂いする。
「やっぱコイツだよ臭せーもん」
「スンスン、ホントですですねセレーネ、お風呂入ってないんです? 」
「まぁ、逃亡生活のゴタゴタでそんな余裕なかったですわね。シュレイドもそうではなくて? 」
「ああ、そうだな」
異世界転生してから一度も風呂入ってなかったっけなそう言えば。
濃密過ぎる一週間ちょっとだった。
「スンスン、でもシュレイドさんは匂いしないですですね。」
「イケメンは匂わないのさ」
なんてふざけた事を言ってみる。
二人の視線が冷たかった。
眠くなったから寝る。
船内は多少揺れるから寝心地は悪かった。
だからだろうか、あんな悪い夢を見たのは。
ピロリン。
豚島からメールだ。
気怠げにベットから体を起こした。
「どれどれ……」
『お主が欲しがってたアケコンのパーツがアキバにあったでござるよ』か、
ハムカツメロンに負けた後の俺は格ゲーに燃えていた。
アイツに勝ちたかった。
だから使える時間も金も全て格ゲーに費やし、コントローラーにも拘った。
ロリコンだから女児キャラのロンロンを使ってたけど、勝つ為に強キャラのシュレイドを使うようにもした。
全国ランキングでもトップ100に入る程強くなったし、プロ相手に勝った事もあった。
高2の夏、薄暗い自室で、俺は沈む太陽よりも燃えていたのだ。
そんな夏のある日、俺は目眩がする様な出来事に相対する。
そんな話、そんな夢。
8月の頭、俺はとうとうゲームセンターDX(店名)の大会で優勝した。
ハムカツメロンは居なかったが、有名プレイヤーを数人破っての優勝だったので、称賛の声が多く上がった。
「すげーぜペディさん! 」
「ペディシュレイド上手すぎ……」
「あのシュレイド使い……できる! 」
「うおおおおおおお、やったぜ! 」
「おめでとうでござる! 」
豚島とハイタッチ。
因みに豚島は使用キャラをロンロンにして大会に出ていたが、一回戦で負けた。
もう十分に強くなった。
そろそろハムカツメロンを探そう。
そう考えるのは自然の事だった。
躊躇はあったのだ、再び会ったところで勝てなきゃ意味ないし、そもそも他人の女子高生の行方を探すなんてストーカーじみている。
だが、俺はもう迷わなかった。
奴に勝つまで消えない敗北の屈辱、それよりもあの一瞬の感動をもう一度見たいと、その為ならどんな手段だって構わないと思えたから。
あの時目に焼き付けたハムカツメロンの姿……確か制服を着ていた。
「確かインターネット配信者が部屋に掛けてあった制服から特定された事件があったよな……」
あのゲーセンに来れる距離の高校、その公式サイトをパソコンで片っ端から調べる。
30分、あの制服と同じ制服が載ったサイトを見つける。
「流石にちょっとドン引きだな、マジで見つかるとは……」
○□高校か、ふーん。
とりあえずひと段落と傍に置いたコップを飲もうとした時、手元が狂って戻るボタンを押してしまった。
「あっやべっ」
コップに向かう手を戻し、再検索する。
忘れる前に元のサイトに戻っとかないとな、また30分も検索しまくるのはごめんだ。
○□高校っと。
「———っ! 」
検索エンジンのサジェストに映ったワードに俺は凍り付いた。
『○□高校 交通事故』
……ま、まさかな。
シーズン2、開幕です。




